5-5

鬼灯さんは当たり前のように言ってきた


あのほかほかご飯は食事用ではなく実験材料として炊いたらしい


しかしなぜ…?



「リューコちゃんは自分のブーストアイテムが何かを理解しているかしら?」


「私の…?


私のブーストアイテムは糖質だよ」



なんでそんなことを聞いてくるのだろうか


不思議に思いながらただ黙々とおにぎりを作っている鬼灯さんの横顔を見つめる


そして聞いたんだ



「おにぎり…好きなんですか?」



今思えばおにぎりが好きなのは当然のことだと思ってしまった。


もう少し考えてみればその理由がわかった気がするのに私は全く考えようともしないなんて…


まだ私の頭は悪かったんだな



「ふふっ…おにぎりは好きよ


私が外科医として世界中の患者の命を助けてた時ね、あまりにも多忙な日々でご飯が食べれなかったの


結果、自信が栄養失調で倒れてその時食べたのがおにぎり…とっても美味しくてたった一つのおにぎりが私のお腹と心を満たしてくれたの


故郷の味がおにぎりであり、私の心を満たすのがおにぎり



そしてブーストアイテムもおにぎりなのよ」



わお…ただのおにぎり大好きオカマという訳ではなかったのか


それにしてもおにぎりがブーストアイテムだったのか、これはあだ名を考えるときに使えそうだ。



おにぎり将軍…はさすがにだめだよね



「大好物のおにぎりがブーストアイテムって、偶然なのかな?」



私はただそうつぶやいただけだ


それなのに彼はキラキラとした瞳...というよりギラギラした目でこちらをみて両肩を掴んできた。



「えっと鬼灯さん?」


「リューコちゃん…あなたは素晴らしい目を持っているわ!」



突然なにか言い出したぞこのオカマ



「なるほど!義獣人の力を引き出すブーストアイテムはなぜ一人ひとり違うのか!


まずはそこから考えたわ!


そしてある仮説を建てたの!」



話すスピードは私のためにゆっくりにしているんだろうけど、話す気合がすごいな



「いいリューコちゃん?


私のブーストアイテムがおにぎりなのは偶然なんかじゃなかった!


義獣人が今までで最も心を満たした食べ物の成分が義獣人の体内でエネルギーとなって、義獣人の力を引き出していたのよ!」



今までで最も心を満たした成分?


じゃあつまりそれは、私の好物の甘い食べ物がブーストアイテムなのは偶然ではないことの理由にもなるのか?



「じゃあつまりブーストアイテムを知ることは自分の中でなくてはならないものを理解することになる?」


「あら、良いことを言うじゃないリューコちゃん!」



なるほどそういうことだったのか


気づいているようで全然気づかなかった


いまになってようやく気づけた


小さいときから辛いことがあったら決まって甘いものを食べてたな…つまりはそういうことだ。


鬼灯さんのおかげだ、感謝しないとな



「あっそうだ…


鬼灯さんのあだ名でいいのを思いついた」


「あら、一体どんなのかしら?」



それは彼をよく知ったことになったものであり彼の心を満たしたもの



「ライス…今日から鬼灯さんのあだ名はライス


ちょっと安直かな?」



ネーミングセンスなんて私にあるわけない、だけど一生懸命考えて絞り出したのがこのライスという名前なんだ。



「いいじゃない!私らしいあだ名だわ!」


「本当に?


よかった…もしこのあだ名が嫌だって言われたら米将軍にしてた」



そう言ったら彼は真顔でライスで良かったと呟いていた。


まあとにかく、これからもよろしく



「ライス」


「ん?なにリューコちゃん?」



別に


ただ呼んでみただけだよ



そうやって忙しくなりそうと言いながらも嬉しそうな顔をするあなたが少しずつ好きになりそうだよ、ライス

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