4-5


「よっ…!


意外と難しいね」


「まあ普段慣れない筋肉を使って飛ぶわけだからね」



地面から浮かんで足なんて着地以外に意味もない


私は背中に生えた日本の羽だけを動かしているのだ。


義獣人は大体の人が自身の力をコントロール出来る


私は全然そんなこと出来ない…だからこうやって特訓しているんだ。


背中のみを獣人化させようとしてもどうしても竜の鱗が足にまで見える


一方で飛行訓練を付き合ってくれている紫雨さんは翼が生えた背中部分のみを獣人化させていた


グリフォン特有の鷲の翼は力強さを感じる


ドラゴン特有のコウモリのような羽とは違ったかっこよさもあるな


なんてことを考えて油断をしていると



「へぶっ!?」



簡単に地面に顔面を強打することになる


痛む頭を抑えて起き上がり上を向くと、紫雨さんが心配そうな顔をしてゆっくりと降りてこちらに近づいて来ていた。



「大丈夫!?


今、思いっきり顔から言ってたけど…」



大丈夫なわけないだろ…いくら再生能力が高いからって痛くないわけがないんだから


なんて言ってる間にも顔の腫れがひいてきた…やっぱり早すぎるわこの再生は


もう一度背中の羽を動かして滞空時間を伸ばすように集中をしよう



羽を動かしては何度も落ちて…だけどそれを繰り返していくうちに失敗は減った


すると新しい課題がどんどん増えてきて…



「火を吹いたり空を飛んだり…他にも練習するべきことが多い」


「他にもより硬い鱗を作る練習とかね~」



とにかく課題が多い


ため息をつきたくなるのをぐっと堪えて再び羽を動かして空を飛ぶことに集中する。


深呼吸をして心を落ち着かせろ


自然に飛べるようにするには飛べることが当たり前だと思い込むことも良い


背中の羽をゆっくりと動かして少しずつそれを早く強く激しくやる




「それに合わせて足にも力を入れて…


ジャンプッ!!」



生み出した風に身体を持っていかれそうになるのを何とか堪えて何度も羽ばたかせる


まだふらつくけどかなり安定した


ようやく成功したんだ



「やった…!


すごいよリューコちゃん!」



皆が私の成功を心から喜んでいる


右に旋回してみたり縦回転をしたり…かなりその力を使いこなせている



私はとうとう自分の能力を使いこなせるようになったんだ



嬉しい



まだ戦闘には使われることはないだろう


だけど第一歩は踏めた気がする


まずは秋元のおじさんに報告しよう



「おじさん…!私飛べたよ」


「うん見てたよ…よく頑張ったね」



優しい笑みを浮かべて私の頭を撫でるおじさんの手


こんなに優しいと感じるのはポチやニコやジェリー以外にいない


この手から感じる感情は自然と私の心をポカポカとさせて口元を緩ませる



「ありがとうございます


この感覚を忘れずにこれからも頑張ります」


「うん…その意気だよ」



秋元のおじさんや情報化の人達のおかげで私は大きく前進できた


この調子で義獣人隊の正式入隊が決まるその時までに強くならないと



私を見つけてくれたポチに恩返しをするためにも…ね

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