2-1
もうすぐ梅雨明け入りしそうな空
覆われた雲の隙間から見えるそれは青くて時か止まったように感じる程美しかった。
「リューコ
早く運動場に行くぞ~!」
「………わかった」
私の名前はリューコ
この幸せを噛み締めて今日も生きる
「7秒26か……13歳にしては速い方だな」
「そう…」
大きな屋根空の見えないここは運動場A
先日から私が仮入隊した義獣人隊の本業は戦うこと
だから戦闘訓練なんてここでは当たり前
だけど私はまだ未成年で仮入隊の身だ
今は戦闘訓練はせずに体力テストをしている程度
監督はもちろん私の監視役で隊長をやってるポチだ。
「ポチ…」
「ん?どうしたリューコ」
前から気になって仕方がないのだ
どうして私の面倒を見てくれようとするの?
言いたいのに何故か口から出ない
頑張って言おうとしても
「隊長!司令官から呼び出しです!」
「わかった…悪いが山口渚を読んできてくれ
こいつの体力テストの監督をさせてくれ」
こうやって邪魔が入るんだ
ポチがいなくなると、伝言を預かっていた人はスマートフォンを使って言われた通り山口渚を呼び出していた。
山口渚…確かポチからニコって呼ばれてる人だったような
数分後タバコを吸いながらこっちにやってきたのはやはりニコだ。
「言われた通り来たぞ~
お前は仕事に戻りな、リュウのガキを見てくれてありがとうね」
「いえ、では失礼します!」
ニコは意外なことに人と接する時はちゃんとしているタイプの人だった。
仕事があるであろう彼のために感謝をして下がらせると、今度は私の体力テストの結果を見て褒めてくれた。
「おっ…もう50メートル走までやったのか
あとは俺も苦手な持久力だけか……少し休憩してから走るとするか」
吸ってたタバコの火を消して持ち運び出来る灰皿にそれを捨てると私に近づいてまたポチみたいに頭を撫でてニヒルに笑った。
ニヒルに笑ってる…そう見せかけて本当はとても優しく接してくれるのがニコやここにはいないポチ達だ。
そんな彼らが私は少しずつ好きになりつつある
でもまだそれを表には出さない…出せないのだ
「休憩…5分あればいい」
「5分…じゃあこれでも食ってろ」
私が生意気な態度をとっても彼は決して怒ることはなく決まってポケットからお菓子を出して私にくれるのだ。
いいのだろうか…?
これは私にとってはドーピングをしているのと変わりないのだが
「いいの?私のブーストアイテムは糖類…だからこれはドーピングと変わらない」
それを言ってもニコは笑ってた
「平気だ、君の場合ブーストアイテムは果糖だ
それを避ければブドウ糖でも問題ない
というわけでこのチョコレートを食べていいよ」
私の手をとって勝手に1口チョコを置くと距離をとってまたタバコを吸いはじめた。
本当にここの人達は…優しすぎる
……あれ?
「ニコ…ここって禁煙エリアじゃなかった?」
「……あっ」
慌ててそのタバコの火を消すのはいいけど多分監視カメラでバッチリ撮られてるからポチに怒られると思うよ
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