1-7
その部屋の存在を知ってから私の頭は動きだした
逃げないとダメだ
そう脳は命令しているのに身体は全くと言っていいほど動かない
足よ動け
腕を振れ
どんなに脳が命令しても全く動かない
気づけば腕を引っ張られて部屋の中に連れ込まれた
チャラチャラと鳴る鎖が私の腕と足を縛り付けてその場から動かさないと言っているようで身震いした。
「私ね…美味しいお茶も美味しいお菓子も好きなの
でもやっぱりこうやって…
君みたいな可愛い子の血が大好きなのっ!!」
異常者だ…こいつは私なんかよりももっと異常者なんだ
逃げようと考えてようやく動いた手と足
なのにどうして鎖を外せない?
私だったらこんな鎖なんて簡単にぶった斬ることだって可能だ
なのにどうして?
「ああよかった…お薬効いたみたいだね
あなたが逃げたら泣き顔も叫び声も全部楽しめないからね…。
あのお茶美味しかったもんねぇ!」
そうか…あのお茶を飲んだ時に感じたあのふわふわした気持ち
あれは私の体が正常に機能してないサインだったのか
私は呆れるほどに頭が悪いのだと自覚してしまった。
「私ね…昔からこうやって可愛い子をこの部屋に連れてはお気に入りのナイフで皆を切り刻んだりしてたんだぁ…
今回はどんな鳴き声が聞こえるか……なぁっ!」
「がぁっ…!?」
いきなり腹を刺してくるあたり本当に趣味が悪い
「どう気持ちい?
こことか、こことか……
こことかこことかこことかこことかこことかこことかこことかこことかこことかこことかこことかこことかこことか!!」
段々と早口になって私の体の至る所を刺してきてはニコニコとしている
痛い…苦しい……
そんな言葉で言い表せるレベルじゃない
こんな苦しみを味わうほどに死が近づいている気がしてならない
でもそれを許さないのはこの体なんだ
「ん…?もしかしてあなた……
義獣人なの?
素敵…傷が治っちゃった…!
ならいちいち可愛い子をこの部屋に連れて来なくて済むわぁ…
こことか刺したら気持ちい?」
シュー…と音と煙を立てて傷が治る様子を見たこいつはより口角を上げて笑うと何度も同じ場所を刺したりしてきた。
私は義獣人であり不死身に近い身体をしている
先程糖分を摂取したから傷の治りが早い気がする
なんでまたこんな苦痛を味わう羽目になってしまったのだろう…
もういっその事心臓を突き刺して欲しいものだ
「ぁ…うぅ……ころ…して……」
「ふふ…じゃあおやすみなさいっ!」
本当に心臓目掛けてナイフを振り下ろすその様はとてもゆっくりに見えた。
これはなんだろう?
もうどうでもいいや
ピンポーン!
「こんにちは~!
宅配ピザをお届けに参りました!」
あぁ
最後に聞いた言葉がこれとか最悪だ
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