1-3
異世界から帰還した勇者の存在が世に広がってからもう20年
人間がしてきたのは恐ろしいものだった
ある日勇者の連れてきたモンスターの存在はとても大きく、利用する以外になかったのだ。
モンスターの生態を知り尽くし、改造しそれを人間の体に埋め込むという異常さ
当時の研究者らはこう語っていた
「人類が進歩した瞬間を見た」
……と
しかし、その進歩のために多くの命が犠牲になったことを知ってる者は少ない
そして生き残った者達は2つの選択があった
国のペットになるか
逃げ出して自由になるか
この2つだけだった。
多くの生き残った者達がその場を逃げ出した
そして残された者達は国が保護して能力を伸ばさせた
能力を伸ばし高い知能を自分の力で手に入れるとその者達による部隊が結成した
その名を「義獣人隊」
体に馴染んだその力で政府が悪と認識したものを破壊する
彼らはペット
忠実なる下僕なのだ。
「今回はこの義獣人を保護してもらいたい」
それは、丁度私がコーヒーを飲んでる時に起きた出来事だった。
仕事中に呼び出しなんて…まあ休憩時間にそれをやられるよりかはマシだけど
しかし今度はドラゴンの保護か…
確かに私にはこういう仕事はよく来るけどいくらなんでも私に回し過ぎだろ
ここはガツンと言って仕事を減らしてもらおう
「あの…ひとつよろしいでしょうか?」
「どうした?」
…………なんだよこの威圧は
本能的に感じる
これは断ったらもっとめんどくさい仕事を回される気がしてならない
「いえ…なんでもないです」
結局私は与えられた仕事を全てこなす忠実な犬にならなければいけなかったのだ。
やっぱりここはこの仕事を受けるしかないな
結局今回もまた保護対象に関する資料を受け取ってしまった…。
「あー…なんで私はここのリーダーをやってんだろ」
頭を抱えながら空のマグカップに動力源となるコーヒーを注げば私は椅子に座るよりも先にそれを口に運んだ。
「ポチさん…座ってからそれ飲みましょうよ…」
「へーへー」
面倒くさそうに返事をして素直に椅子に座って再びコーヒーを口に運ぶと同時にマグカップを持つ手とは逆の手に持つ書類に目を移した。
今回の保護対象はドラゴンね…
最近、原宿での不審な人物の目撃情報があり調べてみたらやはり1年前に逃げ出した義獣人の1人だった。
被検体番号14106「五十嵐 灯」
両親からの虐待を受けて5歳から10歳の5年間を児童養護施設ですごした。
そして10歳になった時に政府が実施した無料健康診断という名の身寄りのない子供達から義獣人としての適性のある人物を探し出した
その際に彼女が選ばれた。
それにしても…身寄りのない子供まで義獣人にするなんてやはり研究者という生き物は頭のネジが1本どころか10本は抜けてるな。
「1年前に逃走した義獣人の中の1人ねぇ…
それにしても、ドラゴンの適性のある子供って人生イージーモードね」
「いやそれはねぇだろ…
言い換えればそいつはいつでも人を殺せる銃を持ってることになるんだ
さっさと保護して力の制御を教えるべきだ」
タバコを吸いながらそう言ってきた渚は真剣な表情でそう言っていた。
確かに彼の言葉も一理ある
もし五十嵐灯が人前で間違った力の使い方をすれば大問題
大人も子供も関係なくその場で殺されるだろう
この子はまだ13歳
未来あるこの子は私達が保護する
「よーし、今からメンバー発表するから注目」
かつて…あの人がしてくれたみたいに
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