1-1

いつもと変わらない朝が来た




梅雨明けしたばかりの草木は少し湿っていてそれがまた美しく見える


空を見上げればどこまでも続く青い空と純白の雲しか見えない


どこを見てもこの世界は美しいものばかり



でも一つだけ美しいとは思えないものがある



「本当に…人間の街ほど汚いものは無い」


「お前それ言うのはいいけど司令官の耳にそれが入ったら終わりだからな?」



私がただ呟いただけの言葉に対して素早くツッコミを入れてきたあいつは冷静な顔してパソコンと向き合っていた。


カタカタとキーボードを打つ音


梅雨明けの湿気を除去するために起動させた空調の音


そして誰かがタバコを吸って吐き出す煙の臭い


これが日常になってからどのくらい時間が経っただろうか?



「そう言えば…リューコちゃんがここに来てもう1週間は経ちますね」


そう言ったのは頭にターバンを巻いてる男名前を「浅倉仁」と言ってあだ名はジェリーとてもいい人だ。



リューコ…皆私のことをそう呼ぶ


だけど私の本当の名前はリューコじゃない


私の本当の名前は好きじゃない…だからと言って嫌いでもない


好きの逆は「無関心」


そうあいつが教えてくれたから私は自分の本当の名前に対して無関心になった。



「そう言えば…リュウのガキはポチが拾ってきたんだっけか?」



タバコを吸ったこいつは「山口渚」で重度のニコチン中毒者だ


そして今、渚が言った「ポチ」と呼ばれる人物は相変わらず冷静な表情でパソコンと向き合っていた。



お気に入りの豆を使ったコーヒーと1口飲みながら



「しかしまあこの1週間で大分お前も丸くなったよな…リューコ


今はここで大人しく勉強することを覚えた」



珍しく優しい笑みを浮かべて来たポチの様子が少し不気味に思えて身震いする


1週間で性格が丸くなったか……


それってあんたらのお陰だと思うよ


こんなどうしようもない自分だと自虐することしかできない私を救い出してくれたのは赤いマントを羽織ったヒーローでもない


いつも指を揃えた手を頭の前にやって敬礼してる警察でもない



私を救ってくれたのはいつも目の下に隈を作ってヘラヘラと笑ってるあんたらなんだよ



私は目を閉じて1週間前に起きた出来事を思い出すことにした。


そう…


私の人生を大きく変えてしまうような出来事を





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