第98話 case98
くるみと亮介がアイカを見つけた数日後。
くるみと亮介がマーケットを歩いていると、目の前に、以前くるみたちをバカにしてきた男とアイカが立ち塞がった。
「あれ? お前ら何でここに居んの?」
男はそう言いながらアイカの肩をしっかりと抱きしめ、くるみは2人を避けるように「行こ」と言いながら、亮介の手を握る。
すると男が「まぁ待てよ。 久しぶりに友人と再会したんだろ? あっちにラウンジがあるから、そこに行こうぜ。 雑魚どもに聞かせてやりたい話があるからな! もちろん、俺のおごりでな」と言いだし、アイカは「やっだ~! ハルキったらお金持ち~!」と、歓喜の声を上げていた。
くるみと亮介はイラっとしつつも、『おごり』の言葉に釣られてしまい、2人並んでラウンジにあるソファに腰かけた。
アイカとハルキは人目も気にせず、唇を重ねたり、アイカの服の中に手を入れたりと、見せつけるようにイチャつきはじめ、くるみと亮介はイライラしていた。
「話は?」
亮介が切り出すと、ハルキは「ああ。そうそう」と言い出し、アイカの服に手を入れたまま話し始めた。
「俺らさ、コカトリスやったんだよ。 幻鳥だぜ? お前らとは格が違うっつーの? アイカが来てから絶好調でさぁ! まぁ次の審査ではA+になっちゃうかもなぁ」
「で?」
「幻鳥の価値もわかんない奴に話したところで仕方ないか!」
ハルキとアイカがバカ笑いをし始めると、くるみと亮介は顔を見合わせ、亮介は無言でさり気なくブレスを見せ、くるみはインベトリから、凍ったグリフィンの頭を出してきた。
銀色に輝くブレスと、グリフィンの頭を見た途端、ハルキはアイカの服から手を出し、「帰るぞ」と言った後、急ぎ足でその場を後にし、アイカもその後を追いかけていた。
「…亮ちゃん、ここの支払いってどうすんの?」
「あいつに付けとこうぜ。 つーかお前何持ち歩いてんの?」
「グリフィンの頭」
「そう言う事言ってんじゃねぇの! 持ち歩くなって言ってんの!!」
亮介は呆れながら、くるみと受付で事情を話した後、再度マーケットに足を運んでいた。
数日後、くるみたちは全員幻獣装備に身を纏い、ダンジョンに行くため、検索機を弄るセイジの事を待っていた。
タンクナイトに転職した太一は「幻獣の大盾、やっとできたよ」と言いながら黒い盾を眺め、ノリも黒いアックスを担ぎ「ホント、時間かかったよねぇ」と言いながら、黒いビキニタイプの鎧を着ていた。
ギルドメンバー全員が、黒い装備をしていたせいで、傍から見ると暗い印象に見えるのだが、A級以上のギルドで構成されている集会所は、その価値を知っているため、羨望のまなざしでセイジたちを見ていた。
すると、背後から「やっだ~」と言う、聞き覚えのある女性の声が聞こえ、くるみが振り返ると、ハルキと肩を組んでいるアイカが視界に飛び込んだ。
アイカはくるみと目が合うなり「あれ? B級の雑魚どもだぁ~」と、ゲラゲラと笑い、くるみたちを指さして笑い始めた。
「見て見てハルキ! 真っ黒な装備してる~!! これから自分の葬式でもするのかなぁ? マジウケるんだけど!!」
アイカはそう言いながらゲラゲラと笑い、ハルキは顔をひきつらせ、周囲にいた人たちは、それを見てコソコソと話し始める。
「なんだあれ。 メイドか? 教育がなってないんじゃないのか?」
「幻獣装備をバカにするって、無知すぎるでしょ… あの雇い主、どうなってるのかしら?」
「下品なギルドだな… あいつどこのギルドだ?」
「メイドのしつけもできないなんて、ろくでもない雇い主だな… あいつのギルド、実はC級以下なんじゃねぇのか?」
アイカの発言で、ハルキ自身だけではなく、所属しているギルドまでもが悪く言われてしまい、ハルキは無言でアイカの腕を引き、逃げるようにギルドルームへ向かっていた。
ハルキはギルドルームに入るなり、アイカに何度も平手打ちをしながら怒鳴りつけた。
「このバカ女! あれは幻獣装備って言ってなぁ、現状ではトップ3に入る装備なんだよ!! 俺らはあの素材を手に入れることすら出来ないし、銀色のブレスはA+級の証なんだよ!! あいつらは俺らより格上なんだよ!! わかったかこのクソアマ!!」
ハルキは自分の発言を棚に上げ、八つ当たりをするように、何度もアイカを叩いては怒鳴り続け、アイカは成す術もないままに叩かれ続けていた。
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