第97話 case97
くるみと亮介は集会所に行き、ペアダンジョンに入ろうとしたが、検索機の操作方法が分からず、ふてくされながらギルドルームに向かっていた。
が、ギルドルームにいたのはゴロだけ。
2人は向かい合って座ると、亮介が切り出した。
「だから、昨日のあれは、あの女が抱き着いてきただけだろ?」
「だったら突き放せばいいだけでしょ!?」
くるみの言葉に便乗するように、ゴロがくるみの横で亮介に向かって威嚇し、「シャーっ」と声を出す。
「初対面でいきなり突き放せねぇだろって!!」
「ドスケベ!!」
「シャーっ!」
「だぁもう!! 大体くるみだって俺の作った装備着てねぇだろ!?」
「それとこれとは関係ない!!」
「シャーっ!」
「シャーシャーうっせぇよ駄猫!!」
ゴロはこれにカチンと来たように、亮介に向かって飛びかかって手に噛みつき、猫キックを連発する。
痛がる亮介を余所に、ゴロは猫キックを浴びせ続けていると、ギルドルームのドアが開き、セイジとノリが姿を現した。
「お前ら喧嘩するならペアダン行けよ…」
セイジが呆れながら言うと、くるみは不貞腐れながら「操作がわかんない」と答える。
セイジは思い出したように「そう言えばA+はペアダンジョンなかったな… ソロかチームだけだけど、2人で低ランクのチームダンジョンに行けばいい」と言い、くるみは更に不貞腐れた。
ノリはくるみの隣に座り、ため息をつきながら話し始めた。
「昨日のあの女? 今頃魔獣の腹の中じゃない? 今聞いてきたら、ゲートが閉じる直前に反応があったみたいだし、インベトリが魔法石だらけで走れなかったんじゃないの? ていうかさ、あの女の事で姫が怒るって事は付き合ってんの?」
「え? なんで?」
「やきもちでしょ? 嫉妬ってやつ。 彼氏が他の女とイチャついてたら、そりゃ怒るわよねぇ。 自分の男が他の女となんてさぁ、あたしだったらその場で殺すけど」
「付き合ってない!!」
「じゃあなんで怒ってんの? 付き合ってないなら、怒る必要なくない? ねぇねぇなんで? なんで怒ってるの?」
ノリからかうように言葉を放ち、くるみは返す言葉がないままに、顔を赤くすることしか出来なかった。
「ねぇねぇ、姫ちゃんはなんで怒ってるのかなぁ?」
ノリがいたずらっぽく言うと、くるみは立ち上がり「ソロダン行ってくる!!」と言うと、ギルドルームを飛び出してしまった。
亮介は慌ててそれを追いかけ、検索機の順番待ちをしているくるみの手を握り、「ちゃんと話しようぜ」と切り出した後、くるみを連れて歩き出した。
すると、くるみがマーケットの方に顔を背けて歩き始めると、マーケットの奥に、大きなひまわりの髪飾りを付けた金髪の女が、以前、セイジのギルドをバカにし、くるみの回復弾を見て逃げ出した男と、肩を抱き合い歩いているのが視界に飛び込んだ。
「ねぇ、あれってアイカじゃない?」
くるみが亮介の手を引きながら言うと、亮介は足を止め、くるみの視線の先を追いかけた。
「マジだ…」
2人は黙ったままアイカの方を見ていると、アイカは露出の激しいセクシーなメイド服を着て、人ごみの真ん中であるにもかかわらず、男と唇を重ね、ゲラゲラと下品に笑いながら歩き始めていた。
「彼氏?」
「いや、買われたんだよ。 メイドとして。 落ちるとこまで落ちたんだな。 あいつ…」
2人は喧嘩をしていたことなど忘れ、ただただ呆然と立ちすくんでいた。
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