第81話 case81
千鶴のおかげで人だかりはなくなったが、くるみが1歩歩くたびに「歩いた!!」と言う黄色い歓声が上がる。
思わず「うっせーよ!!」とくるみが怒鳴りつけると、「かっこいい~~!」と言う、黄色い声援が上がり、くるみはその声の大きさに圧倒されていた。
しかも、黄色い声を上げるのは女子生徒ばかり。
くるみは自分の女子力を皆無に感じ、更に肩を落としていた。
授業が始めると同時に、くるみの前には木刀が差し出され、ふと顔を上げると悠馬が「手合わせお願いします」と言ってきた。
『今日は厄日か?』
くるみはそう思いながらため息をつき、足を大きく広げて木刀を担ぐ。
亮介たちが壁にぴったりと引っ付き見守る中、2人は距離を置いて構えていた。
教師の「はじめ!!!」と言う声と共に、悠馬の頭にポカっという軽い衝撃の後、頭の上に何かが乗っている感じがした。
くるみは悠馬の頭に乗りながら「弱ぇ」と言った後、悠馬の頭から飛び降りる。
それと同時に、悲鳴とも取れる黄色い声が上がり、くるみはその声に圧倒されていた。
『早い… 何も見えなかった… これが姫野くるみさん? すごい…』
悠馬はそう思いながら、女の子に囲まれているくるみを眺め、手を握り締めていた。
亮介はクスっと笑い「やっぱ俺じゃなきゃダメかぁ?」とくるみに聞く。
くるみはニヤッと笑い「みたいだね」とだけ言うと、亮介は悠馬の木刀を取り上げる。
「賭けるか?」
「何を?」
「俺が勝ったら1日付き合ってもらう」
「あたしが勝ったら、この前の黒キマイラ素材、亮ちゃんの取り分全部ね?」
「交渉成立だな」
亮介はそう言いながら拳を差し出し、くるみはそれに自分の拳を当て、元の位置に戻っていた。
くるみが大きく足を開き、肩に木刀を担ぐと同時に、亮介も木刀を両手で握りめて構える。
教師の「はじめ!」と言う声と同時に、亮介が「なぁ」と声をかけた。
「何?」
「パンツ見えてる」
亮介が言いきると同時に、くるみの膝が亮介の顔面にめり込む。
亮介は鼻血を出しながら倒れ込み、くるみは「ふざけたこと言ってんじゃねーよ!!」と、真っ赤な顔をしながら怒鳴りつけた。
「見えてたんだから仕方ねぇだろ!?」
「仕方なくないでしょうが!!!」
「制服で戦うからだろ!? ただでさえ短いスカート履いてんのに、足広げたら見えるっつーの!!」
「普通は見えても言わないでしょうが!!」
「言わないでニヤニヤしてる方が気持ち悪ぃだろ!?」
「・・・・」
くるみは言い返す言葉が思い浮かばず、歯を食いしばりながら、幻獣装備に身を包み、足元を燃やしながら亮介に歩み寄る。
亮介は燃える道を作るくるみを見て、慌てて装備を変え、「待て!! 学校燃やすな!! 落ち着け!!」と言っていると、教師がくるみと、燃えている道に水をかけた。
「お前ら2人、反省文書いてから帰れよ」
教師に言われ、くるみと亮介はがっかりと肩を落としていた。
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