第53話 case53
くるみは教師に引きずられ、亮介はその後を追い、真っすぐに生徒指導室へ。
くるみと亮介は椅子に座らされるなり、目の前に白い紙を置かれたが、くるみの前に置かれた紙は、倍以上の厚みがある。
教師は二人の前に座り、「これが何かわかるか?」と聞くと、くるみは「コピー用紙です!!」と、元気にはっきりと言い切った。
教師はため息をつき、「裏を捲ってみろ」と言う。
亮介がめくってみると、そこには大きく【反省文】と書かれていた。
「え? 俺も?」
「河野、お前は姫野の事を教師に伝えなかった罰だ。いいな?」
「…はぁ」
すると教師はくるみを見るが、くるみは紙を捲るどころか、そっぽを向いて見ようともしなかった。
「姫野はジョブの事を黙っていた罰と、無許可でギルド入会した罰。 ギルド集会所に頻繁に立ち寄った罰と、教師を騙していた罰…」
「ちょっと待った!なんでギルドの事わかるの?」
「装備を見ればわかる。 頻繁にダンジョンに行かなければ、あの素材は手に入れられない。 そのためにはギルドに入るしかないだろ? 大方、セイジのところだろ。 それと、学校を壊した罰だ」
「はぁ!? 怪我人出さなかったんだから、それは見逃すべきでしょ!?」
「あんだけ派手にぶっ壊しておいて何言ってんだお前は! ここ7階建てだぞ!? なんで4階建てになってるんだよ!?」
「中庭は緊急避難場所でしょ!? グランド行くにも教室通るでしょ!? 被害者出るでしょ!!」
「引き付けながら階段使って降りて行けばいいだろ!! キマイラ相手に岩でノック打ちする奴がどこにいる!!」
「ここ」
くるみは親指を立てながら言うと、反省文の紙がさらに増えた。
くるみが「ちょっと」と言いかけると、教師が「これ以上言うならさっきの素材、没収するぞ?」と睨み、くるみは黙ることしか出来なかった。
教師がくるみと亮介の前にペンを置くと、くるみは不貞腐れながらブツブツと言う。
「んだよ… せっかく仇取ったのに…」
「仇? 仲間がキマイラに殺られたのか?」
「あたし」
教師は無言で反省文の紙を追加する。
「ちょっとマジだって!! あたし1回死んでるの!!」
「もっとマシな嘘をつけ!」
「本当だって! ヒーラーのジジイに聞いてみなよ!」
「ヒーラーのジジイ? どこのジジイの事言ってんだよ?」
「ヒーラー賢者のジジイだよ!!」
教師はその言葉を聞き、反省文をさらに追加した。
「賢者様の事をジジイって言った罰も追加する」
くるみは黙って頭を抱えることしか出来ず、亮介は隣でずっと笑いをこらえていた。
数分後、亮介は反省文を書き終え、頭を抱えているくるみを置いて教室へ。
教室の中では、くるみの話で溢れかえっていた。
「あいつヒーラーだよな? アックスの柄で大砲打ってなかった?」
「氷も使ってたよな? ヒーラーも装備次第で氷の魔法打てるのかな?」
「マジ強くなかった? 俺、惚れそうなんだけど…」
亮介は思わず声の方を機敏に向き、会話をしている男の子の方を睨みつけていた。
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