第48話 case48

それから数日間、くるみは完全に別行動をしていた。


セイジとノリ、太一は毎日のようにメッセージを送ったが、くるみからの反応はなく、アイテム作成機が稼働しているばかり。


ノリはそれを見て『マナポーション? こんなに大量に? あの子、ソロダンで何と戦ってるの?』と疑問を抱くばかりだった。


亮介は学校でくるみを見かけるたびに話しかけようとしたが、周囲にはチームに誘おうとする人が増えてしまったため、話しかけられないままでいた。


昼休みに、葵からくるみの事を聞こうとしても、人だかりのせいで葵にすら近付けない始末。


くるみが別行動をしているおかげで、ギルドの修練値が上がり、ギルドルームは更に豪華に。


アイテム作成機が二つと、ギルド用アイテム保管機、冷蔵庫までもを設置できるようになったけど、4人がギルドルームでくるみの姿を見かけることはなかった。


ノリはソファに座るなり「姫が居ないと寂しいねぇ」と呟き、太一も「確かに。 姫ちゃんのやる事ってハチャメチャだし、先が読めないから見てて楽しいんだよねぇ」と答える。


亮介とセイジがソファに座ると、太一が「学校で姫ちゃんと話さないの?」と亮介に聞いてきた。


「今、俺がウォーリアってバレて、近付けないんすよ… チームの誘いが多くて…」


「じゃあ姫ちゃんはソロで訓練してるの?」


「いや、ヒーラーの男と二人っす」


それを聞いたノリが「もしかして、姫ってその男と出来てるんじゃないのぉ?」といたずらっぽく言うと、亮介はテーブルを叩きながら立ち上がり「んな訳ないだろ!!」と、顔を赤くしながら怒鳴りつける。


セイジと太一は亮介を見ながら呆然とし、ノリは「へぇ。 亮介ってそうなんだ。ほぅ~」と、意味深な言葉を投げてきた。


ノリは人差し指を立て、にっこりと笑いながら亮介に言った。


「良い事教えてあげる。 女って言うのは、押して押して押しまくるのがベスト。 姫の場合はガードが堅いから、押して押して押しまくって、押し倒すくらいしないと落ちないわよ」


「押して押して押しまくる か…」


「そそ。 今の亮介は引いてるところでしょ? そんなんじゃいつまでたっても、遠くから眺めること以外できないし、今のままじゃ、姫はどんどん強くなって、どんどん先に進んで置いて行かれるわよ? よく言うじゃない。 押してダメなら引いてみろってね」


「押してダメなら引く…」


「今の亮介は引きっぱなしなの。 引いてダメなら押してみろ!って事よ」


「そっか… 押せばいいのか…」


亮介は真面目な顔をしながら小さく呟き、太一とセイジは不安を抱えていた。



翌日、亮介はくるみを廊下で見つけ、追いかけようとしたが、周囲の人だかりを避けることが出来ず、遠くから目で追っていた。


『今のままじゃダメか…』


亮介は小さく溜息をつき、教室に戻っていた。

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