第39話 case39

3人が雑談をしながら戦闘をしていると、ノリが「ねぇ、彼、戦わせなくていいの?」と切り出した。


「あ、そういえばそうだね。 この辺、雑魚いしやってもらおっか」と、太一が言う。


くるみが地面に向かって掌を当て、力を籠めると、魔獣の群れの足元が凍り付き、魔獣たちは身動きを取れない状態に。


3人は歩いてセイジと亮介の元へ行くと、ノリが「君、後頼むね」と、魔獣を親指で指しながら切り出す。


亮介は立ち上がり、魔獣の元へ行こうとすると、くるみが亮介の腰に手を当てた。


亮介が痛みのない衝撃を腰に感じると、体が一回り大きくなり、力がみなぎってくるような感じに襲われる。


くるみが小声で「がんばれ」というと、亮介はクスっと笑い「おう!」と返事をした。


亮介が魔獣の前に立つと、1匹の魔獣の氷が解け、魔獣は勢いよく突進してくる。


亮介は持っていたアックスを思い切り振りぬくと、刃先が魔獣に当たった途端、粉々に砕けてしまい、魔獣を柄で叩きつける。


『やべ!!』


魔獣の勢いは止まらず、亮介に襲い掛かろうとした瞬間、魔獣は強風で吹き飛ばされた。


「やっぱあの武器じゃ砕けるかぁ…」


ノリはそう言うと、インベトリを操作し「これしかないや」と言いながら大剣を出した。


亮介はそれを手に取り、少し振り回してみる。


「それむずくない?」


「むずいけどこれしかないし、あ、姫のアックス貸してみれば? 両刃だし」


「そっか」


ノリとの会話の後、くるみは亮介に近づき、自分のアックスを亮介に手渡す。


亮介は大剣をインベトリにしまい、手渡されたアックスを握ってみると、「冷たっ」と言い、思わずアックスを落としてしまった。


「やっぱダメかぁ… ジョブチェンもしてなさそうだし… そういやさ、賢者のおっさんからなんか貰わなかった?」


ノリが切り出すと、亮介はポケットから、くしゃくしゃになった湿布を出した。


「それ使ってないの?」


「はぁ…」


「それ貼ってみ? ジョブチェンできるよ?」


「え? 湿布で?」


「おっさんアホだから、他の賢者みたいに、能力を引き出すことできないのよ。 ヒーラーのジジイが作った、その湿布がジョブチェン素材。 貼ってみ?」


亮介は言われた通り、湿布を腕に貼ると、力が湧いてきた後、頭の中に、様々な技が浮かび上がり、頭にこびりついた。


「マジか!!」


「マジだ。 どする? それなら姫の装備も持てると思うよ? 大剣にする?」


「いや、くるみの借りる」


亮介はそう言うと、くるみのアックスを手に取る。


『冷たくない… イケる!!』


亮介は氷が解けて動けるようになった魔獣たちを、次々になぎ倒し、数分後、足元には大量の魔法石と素材、イノシシの死骸が転がっていた。


ノリと太一は「おめでと~」と言いながら手を叩いていたが、くるみは亮介の足元をコソコソと動き、風の魔法を掃除機のように使って、素材と魔法石だけを回収しながらインベトリにしまっていた。


「あー!姫ちゃん独り占めすんな!!」


太一はそう言いながら慌ててくるみの元に行こうとすると、くるみは太一を風の魔法で吹き飛ばす。


太一はくるみに駆け寄りながら「山分けがルールだろ!?」と叫び、くるみは「金欠なの!!」と言いながら、またしても太一を吹き飛ばした。


ノリとセイジは、遠くに座り、笑いながらその光景を見ているだけ。


『なんだこのギルド… 無茶苦茶すぎて面白すぎるんだけど…』


亮介はそう思いながら、4人を見ていた。

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