第38話 case38
くるみはみんなに協力金として素材を、りつ子に口止め料として魔法石を渡したため、インベトリがスカスカの状態に。
「あーあ… せっかく集めてたのに…」
くるみはブツブツ言いながら、ギルド用ブレスにさっき作った装備を入れて装着し、ギルドルームを後にした。
亮介は疑問を抱えたままその後を追う。
教師は落ち込んでいるくるみを見て「高難易度ダンジョンでの戦闘が怖いのはわかるけど、そこまで落ち込むことないぞ? 慣れるしかないんだし」と声をかけた。
「・・・・・」
くるみは少し黙った後、小さく「はい」と答え、所定の場所へ。
亮介は黙ったまま所定の場所に着くと、教師が生徒一人一人に金色の石を手渡した。
「これから実際のダンジョンに入る。 危険だと思ったら、すぐにこれを使え。 そうすればここに戻れるからな。 ただし、1度使ったら無くなるし、元の場所には戻れないからな! よく見極めて使えよ!」
そう言うと、ギルドルームから3人が出てくる。
「河野と姫野はこの人たちについていけ。 危ないと思ったら、一人でも帰ってくるように。 いいな」
くるみは小さな声で「はい…」と答えつつも、『稼ぐ! 絶対元取る』と思っていた。
セイジがダンジョンを決めていると、教師がそれを横から覗き込み「そんな高難易度で大丈夫か?」と聞いた。
セイジは機械を操作しながら「大丈夫ですよ。 あいつならこれくらい…」と言葉を止める。
教師は「ああ、ノリか。 また強くなったみたいだな」と言った後、「あの二人、頼むな。 姫野はヒーラーだから戦闘には出れないが、セイジのサポートをさせてやってくれ」と言い、セイジの肩を2回叩く。
セイジは『あれにサポートさせるだと? 無理なことを言うな。 俺が死ぬ』と思いながらダンジョンを決めていた。
ダンジョンに入り、少し歩くと、イノシシの魔獣の群れに遭遇した。
くるみとノリ、太一は話しながら魔獣の群れに近づき、セイジはその場に立ち止まり、亮介に「座ってろ」と声をかける。
亮介が「で、でも…」というと、セイジが「見て学ぶことも大事だ」と言い、眼鏡を擦り上げる。
くるみは歩きながら、青と白の装備に変更し、3人で魔獣の群れの中に。
太一は魔獣を倒しながら、くるみに話しかけた。
「あ、そういやこないだ聞いたんだけど、トウジのギルドがファイヤーゴーレムに出くわしたらしいよ?」
「マジ!?」
「2重ダンジョンの中から出て来たらしい。 炎像の煉瓦をりつ子さんに売ったら100万になったって」
「はぁ!? あたし500万近く請求されたよ?」
「高っ! りつ子のボッタくりって本当に酷いよねぇ」
3人はギルドルームにいるかのような会話を広げ、次々に魔獣たちを倒していく。
亮介は「す、すげぇ… これが上位ギルドってやつですか?」とセイジに聞き、セイジは眼鏡を上げながら答えた。
「いや、中位、ランクで言うとB級だ。 本当の上位、S級になると、動きすら見えん。 S級ウォーリアに関して言うと、アックスを一振りするだけで、辺りの魔獣が裂ける」
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