第36話 case36

『やばいやばいやばいやばい』


くるみはそう思いながら電車に揺られ、急いで集会所へ。


集会所へ入ってすぐ、りつ子に『明日、学校の研修で来る』と言うと、りつ子はにっこり笑いながら掌を差し出し、くるみは笑顔でりつ子の掌に自分の手を乗せる。


「違うわよ! 口止め料!! 3000で良いわよ」


「高いって!」


「あらそう? 残念ねぇ… そんなに反省文、書きたいんだぁ」


くるみは何も言い返すことが出来ず、なけなしの3000を渡す。


「毎度あり~」とりつ子が手を振る中、ギルドルームに向かい、3人に事情を話すと、3人とも「わかった!楽しみにしてる!」と…


慌ててくるみが「違うって! 話しかけちゃダメなんだって!!」と言うと、ノリが「わかってるって! 見てるだけよ。見てるだけ~」と鼻歌交じりに言い、太一は目を輝かせていた。


「せいじくーん、なんか言ってよ~」


「反省文、得意になれるんじゃないか? 何枚出されるか知らないけどな」


「鬼だ…」


くるみは絶望の淵に立たされているような感じになり、落ち込んだまま帰宅した。



翌日、くるみはがっかりしたままバスに揺られ、クラスメイト達と一緒に集会所へ。


ダンジョン検索機の脇にある、広いエリアにしゃがみ込んでいると、集会所管理人として、りつ子が紹介される。


りつ子は「よろしくお願いしま~す」と言い、くるみに対してにっこりと笑いかけた。


くるみは見て見ぬ振りをし、次に教師が装備作成機の説明をするために移動。


生徒全員が、作成機の前に並んでしゃがんでいると、すぐ脇にある階段から、ノリが降りてくる。


赤いビキニタイプの鎧を身にまとった、スタイルの良いノリを見ると、男子生徒から「おお…」という歓声が沸き上がる。


くるみは黙ったまま俯いていると、ノリは「お!センセ!おひさ!!」と声をかけた。


「おおノリコか!久しぶりだな!!」と、教師も声を上げる。


くるみがずーっと下を向いていると、教師が「この人はうちの学校の卒業生で、ウォーリアのノリコって言うんだ。 ウォーリア志望の奴は後でアドバイスをもらうと良いぞ」と声を上げた。


『ウォーリア志望? 王子じゃん!』


くるみはふと顔を上げると、ノリとバッチリ目が合う。


ノリは「うふっ」と笑った後、りつ子の前に座り、こちらを眺め始める。


『お願いだからギルドルームに行ってください』


くるみがそう思っていると、教師が「じゃあ、練習用の武器をベースに作ってみろ。素材はスライムとキノコの素材で大丈夫だ。ない奴は誰かから貰えよ~」と言い、次々に作成機の前へ。


くるみはブレスレットのインベトリをチェックすると、中身が空っぽの状態だった。


『やべぇ!! 中身入れ替え忘れてた!! ギルドブレス… ロッカーの中だ!!!』


慌てて顔を上げると、ノリとくるみはバッチリと目が合う。


『ノリちゃん!お願い!ブレス持ってきて!!』


くるみが目で訴えていると、ノリはにっこりと笑いかけるだけだった。


『違ーう!! 気づいてよ!! ホントマジで!!! どうしよ! どうしよ!』


くるみがそう思いながら周囲を見渡すと、太一の姿が視界に入る。


『たいっちゃん!!! お願い!!! 気づいて!!!』


くるみは念力をと飛ばすように目で訴えたが、太一は何事もなかったかのようにギルドルームの中へ。


『うぉ!! マジか!!!!』


くるみが嫌な汗をかき始めると、セイジがノリの元へ行き、何かを話し始める。


『セイジ君!!!』


くるみが必死に目で訴えると、セイジはくるみと目が合った後、鼻で笑い、ギルドルームの中へ消えて行った。


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