第35話 case35
ウォーリア賢者との特訓を終えた後、亮介はくるみの体を抱えてヒーラー賢者の元へ。
ヒーラー賢者は「やれやれ」と言いながら、二人を回復した。
くるみは回復してもらうなり「さんきゅー」とだけ言い、部屋を後にする。
亮介が「大丈夫か?」と聞いても、「ん~?」としか言わず、二人はそのまま別れた。
くるみは就寝前、父親に言われた新しいカプセルを一粒飲んだ。
が、翌朝になると、体のだるさはより一層ひどくなっていて、起き上がることすらできなくなっていた。
安田さんが心配し、父親に電話をすると、父親はすぐにくるみの元へ。
くるみは久しぶりに会った父親の顔を見て『老けたなぁ…』と思っていた。
父親はくるみに注射を打った後、以前と同じカプセルを渡し、さっさと家を後にする。
くるみは何を打たれたのかも、何を飲まされているのかもわからないまま、眠りについてしまった。
翌朝、くるみは目が覚めると、昨日のだるさが嘘のように。
『今日、絶好調じゃね?』
そう思いながら学校へ行くと、教師が心配そうに声をかけてきた。
ただ、『おう!マジ絶好調!!』なんて言うと、ヒーラーで無いことが一発でバレてしまうため、小声で「…大丈夫です」と言うだけに留めていた。
この日は1日実践訓練があり、くるみは亮介たちのチームへ。
前回に入ったダンジョンよりも、少しだけ難易度が高く、中には手足の生えたキノコがうごめいている。
アイカとミナはキャーキャー言いながら鞭を振り回し、近くを通ったくるみの腕に直撃。
『痛っ… 雑魚が… 黙って殺れよこのカス』
くるみは少し不貞腐れながら亮介たちと奥に行き、階段を下りていた。
ボスの間に到着すると、そこには大きなキノコのお化けが。
孝文と和夫はそれを見るなり「俺ら無理かも」と尻込んでしまい、葵はガタガタと震えるばかり。
すると亮介が「俺らでやるか!」と声をかけたが、くるみは黙ったまま一人で前に進み、装備を変えた。
大きなキノコの化け物は、くるみに向かって突進したが、くるみは右手をキノコに向け、大きな炎の塊を放つ。
すると、キノコは断末魔の叫びをあげ、炎と共に消えて行った。
『来るか?』
くるみはアックスを肩に担いで構えていたが、ボスの部屋は何の変化もない。
『あれ? 無いの? あれ?』
そう思いながら辺りを見渡しても、何の変化もなく、シーンと静まり返っているだけで、足元には素材と魔法石が転がっている。
「えー… 2重開けよ! ったく、せっかく絶好調なのに…」
くるみが不貞腐れながら振り返ると、亮介以外のメンバーは顔をひきつらせて笑っていた。
その日の帰り際、教師が「明日はギルド集会所に行くからな! ブレスレットを必ずして来いよ!」と声をかけた。
『集会所ねぇ… こんな雑魚どもと行ったところで… ってまずくね? ギルド入ってること、ばれたらマジやばくね? 反省文どころの騒ぎじゃなくなるんじゃね?』
くるみはそう思いながら、血の気が引いていくのを感じていた。
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