哀すべきボクらの世界

藤咲 沙久

変わらない空の下で


「あたしがいなくなったら、あんたは壊れてくれる?」

 その言葉のトーンは、お弁当のおかずは何だろうね、くらいのものだった。ボクは意図してゆっくりと瞬きをする。改めて視界に映る、風になびいた彼女の細く長い髪。毛先が一直線に揃えられた髪型はなんだかちょっと古臭い。

「……どうなるんだろうね、ボクは」

 いつかこの場所でそうしたように、空を見上げてみる。高い笑い声がかすかに耳へ届いた。

「嘘でも、壊れるって、言うところだよ。ばーか」

 そう言った時の彼女の目は優しかったと、見てもいないのに感じた。

 それが僕の勘違いじゃなければいいのに。そんな風に思った。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る