Believe

満月 蒼李

第1話 出会いの春

出会いの春ってよく言うし

別れの春ともよく言うし

春って、人との交流を盛んにする季節だと私は思う。

私の中で春は別にそこまでの思い出ってのは無くて

そんな事言われてもうーんって思ってしまうんだよね。


でも1回だけ忘れられない出会いはあった。


それは高校の入学式。桜舞う中、入学式に向かう生徒やその家族。よくある光景だし私もその中の1人。受験の時とは違う気持ちが胸を踊らせる‥‥これから何が待っているのか。良い事だらけではないのは確かだと思うけど、やっぱり良い事ばっかり考えてしまう。そんな私は‥


心奪われる出会いをした。


お?恋か?ん?青春か?いいなぁー!とか思うかもしれない。周りから見たらそんな状況だろう。

だって私はそこから動けないくらいに惹かれていた

でもこれは恋ではない。

心奪われたけど、そういうのじゃなくて‥

私が見たその景色に映る彼女が

何かの作品の中に居るような感じで

上手く表現ができないけど

言葉にならない気持ちになった


彼女は私に気づいて

微笑んで会釈をしてくれた。

私も慌てて返したけど、あんな素敵な子が同級生になるのかと

さっそくいい気持ちになっていた。

その後はもう、誰でも良い事があったんだろうなと分かってしまう程に足どり軽くニヤニヤしながら私は学校へと向かった


学校に着きクラス分けの紙を貰い教室に向かう

その途中も、どうしよ!彼女とクラスが一緒だったら!あー友達になれるかなぁとワクワクしていて


「アイツ変だぞ」


「やば、一人でニヤついてる。」


と前同じ学校だった男子からコソコソ話されていても気にしないくらいに1人で盛り上がってた。


自分のクラスの教室に入ると

もう希望通りで彼女は居た。

窓際一番後ろのに、これまた絵になるような

彼女のいる所だけ別世界のようで‥

だけど立ち止まってたら迷惑になるからと自分の席に座る。

彼女は気づいていたのか分からないけど窓から外をずっと見つめていて、こっちは向かなかった。

私は廊下側の一番後ろの席だったのでその彼女を見つめていた。

前に座っていた男子が、私の視界の前で手を降ってきて邪魔をするまで


「おーい、うさ。何見つめてんの?」


「何さ、人の邪魔しないでよ。いのには分からないんだから」


「お?でた!うさの女好き」


「人を女たらしみたいに扱うな」


「またまた。うさはめっちゃ綺麗な女子や可愛い女子には目がないじゃん。めっちゃ男目線みたいだなぁと思うくらいに」


「は?それは私が女じゃないと!?」


「そうともいうー!」


「そのモノマネ似てない」


「えー新作だったのに」


「はいはい、静かにしろー」


先生が入ってきた事で話は途切れた

彼とは小学校からずっと一緒で

こんな感じでいつもふざけている、だから話しかけたかったんだろう。

そのタイミングで彼女に目線を戻すと

彼女の横顔がまた良くてまた見つめてしまった。

先生の話が終わり皆が席を立つタイミングで私は、我にかえり

入学式に向かう為に廊下へ出席番号順に並んだ。

もちろん前は、いので


「また、うさ見つめてただろー」


「それが何さ」


「いっそ告白したら?」


「なぜそうなる」


といじられながら向かった。 


入学式が始まり

体育館に入り、座り

呼ばれたら返事して立つ。振り返りお辞儀。そしてもとに戻り座る

そんな流れだった

担任が挨拶し私のクラスが呼ばれる順番へ


「1番赤井玲良」

「はい」


私は早い方なのですぐ呼ばれる


「4番井上拓真」

「はい」


「5番宇佐美ゆめ」

「はい」

自分が呼ばれてお辞儀をして座るまで

なんとも言えない緊張だった。

いのが、ニヤニヤして見てきたがあえて見ないふり


「19番林香奈恵」

「はい」


「20番葉山龍也」

「はい」


その後も何人か呼ばれ顔を覚える為にチラ見していた。

そして間もなく彼女の番。

名前覚えなきゃと真剣になる


「29番山本奏」

「はい」


「30番渡邊美優」

「はい」


呼ばれた彼女の声は綺麗で

仕草もとても目が離せなかった


「また、うさガン見してる」

ぼそっと彼の言葉で

慌ててまっすぐ向くが

美優って名前かぁ‥本当に名前ぴったりなくらい美しいよなぁと

私は彼女に夢中だった。


あっという間に入学式も終わり教室に戻り、先生の話が終わると

帰宅時間に彼女に挨拶しようと見ると


「ねね、美優ちゃんだっけ?私、香奈恵!かなって呼んで!で、こっちがれいれい!」


「玲良だよ、よろしくー!」


「よ、よろしくお願いします。」


「暗いなー!仲良くしようよー。同級生なんだしタメ語でいいしさ」


「それな」


「う、うん。」


わー!先来されたー!と私がその場で落ち込んでいると


「うさが、絶望してる」


「うっせ!この気持ちは、いのには分からん」


「変態おっさんみたいな思考は分かりたくもないね」


「なっ!?女子に向かってそれはないでしょ!」


「またやってるの?漫才」


「そっちゃん!聞いてよ!いのがいじってくるの!」


「事実を言ってるだけだろー」


「確かに」


「えー。そっちゃんまでそっちの味方するんー?」


「うじうじしてると、そうにしか見えませーんっ。ほら、ゆめち行ってこい!」


そっちゃんに背中を押されて彼女の方に

ドタバタ音で彼女と、その周りにいた二人も振り向き

とても恥ずかしかったので多分顔は真っ赤だったと思う

それでも


「あ、あの!渡邊さん!門の前で見た時からめっちゃ友達になりたいと思ってて‥その、良かったら友達になってください!!あ、で、でも、こんな奴嫌だよね、ごめん、忘れて!」


一瞬の間のあと二人の方が


「待って、めっちゃウケる」


「1人でめっちゃ話進めてるし」


と二人が私の肩に手を回して


「私達が友達になりたいわ」


「マジでそれな!」


と予想外の展開に

トントン拍子で話が進んでいく中

彼女はそっと帰って行ってしまった


私はそんな彼女を横目に

二人と話してた。


「なんて呼ぼうかなー」


「ゆめゆめでいいんじゃね?」


「それは性格には合わないよ」


「なんか遠回しにいじられてる気がするんですが」


「えーそんなこと無いよ」


「じゃあ、うさみん?」


「いいね!」


結局彼女とは話せずに帰ることに。

れいらっちとかなっちと連絡先の交換をし

いのとそっちゃんと下校する事に


「さっきのうさマジで笑えたよ」


「めっちゃ1人で漫才してたよね」


「そんなつもりは無かったんだけどなぁ」


「でも、あれで振られたな」


「告白じゃないんだけど‥‥」


「まぁまぁ、ゆめちには私が居るじゃん」


「そっちゃんは好きすぎるので離れないでください」


「え、それはやだ。」


「えぇーー!!!」


「うさ、うるせぇ」


「だってそっちゃんが嫌がるんだもん」


「俺も嫌だね、うさの傍に居るとうるさくて疲れる」


「またまたー!二人ともツンデレとみた!!」


「奏、こいつおいて帰ろうぜ」


「そうしよっか、たっくん」


「いいもんね、嘘泣きしてやる」


「それ、なんの効果もないぞ」


と笑いながら帰宅。二人と同じクラスになれてよかったなぁと思いつつも、彼女の事が気になって仕方なかった。



翌日

オリエンテーションをしながら教材やジャージの受取があった。オリエンテーションは仲を深めるという時間もあり、グループわけをすることに


「うさー、一緒のグループ組もうぜ」


「いのとは既に仲良いのだが」


「分かんねぇよ?そう思ってるのはうさだけかも」


「なぬっ!?」


「うさみんー、私らも混ぜて」


「いいよー!いのと二人きりは嫌だし」


「なんだよ、その言い方」


「さっきの仕返しーっ!」


「ウケるー、仲良すぎ」


「れいらっちとかなっちも仲良いよね?」


「ま、中学校から一緒だからね」


「あ、自己紹介まだやったね。私は香奈恵、好きに呼んでね。拓真はくまっちって呼ぶね」


「私は玲良!よろしくっ、くまっち」


「くまっちだって」


「そこ笑うなよ。まぁなんて呼ばれてもいいけど、よろしく」


「あと一人混ぜてもいい?私の後ろのやつなんだけどノリ良くてさ」


「いいよー、どんとこい」


「だって!りゅりゅー!」


「りゅりゅ?何かの雑誌みたい」


「その呼び方やめろよ、女子みたい」


「いいじゃーん、可愛いし」


「良くない。騒がしくしてごめんな、俺龍也!よろしく」


「俺、拓真。よろしくな龍也」


「お!高校生活初の男友達じゃない?いの」


「え?うさ、女だったけ?」


「なっ!?」


「さっきの仕返しだよ」


と5人で話をしている所にそっちゃんが彼女を連れてやってきた


「ゆめちー!私達も混ぜてっ」


「いいよ!そっちゃん」


私は彼女と目が合うと固まってしまって

やっぱり綺麗だなぁって感じていた


「あ、うさが昨日に引き続き恋してるー」


「ゆめちにはまだ早かったかな?」


彼女は目をそらしてしまった


「席が前後だからさ今日、朝イチで話しかけたら仲良くなれて‥ゆめち達ともって思って」


「渡邊美優です。よろしくお願いします」


「みゆっち昨日よりも、なんかいい表情じゃん」


「ね!それな」


「入学式の時俺も気になってた。可愛いよね、美優ちゃん。俺の名前は龍也。よろしく」


「うさが一目惚れするだけはあると思う。あ、俺拓真。うさから、いのって呼ばれてる」


こうして7人グループになり

オリエンテーションはこのメンバーでまわる事に

もちろん私は彼女と昨日事もあり、声掛けられずに居る

そんな私を見てそっちゃんは


「みゆみゆね、ゆめちに昨日声掛けて貰って嬉しかったらしいよ。」


「え!?そうなのっ?」


彼女はコクっと頷いた

するとれいらっちが


「えー、何それ。私達は嬉しくなかったのー?」


「あ、あの、えっと‥嬉しかったです」


「それなら良かった♪あ、あと敬語はやめよっ」


「そうですねっ、気をつけます」


「美優ちゃん、それ敬語」


「あ、ご、ごめん」


「ほらほら、まぁ良いじゃんか。そのうち慣れるよ」


「そうだ。少しずつでも良いだろ」


少し空気が悪くなった気がした。そこをそっちゃんが切り替えてくれて


「はいはい!人数が多いんだから緊張してるだけだよ、みゆみゆもれいちーともかなちーとも友達に慣れて嬉しいだろうし。実際私は嬉しいし!」


「私も嬉しいよー!そっちゃんだけしか女友達作れてなかったし」


「うさみんもそうちゃんも、最高すぎるよー。マジ今度タピろ?」


「いいけど、みゆみゆも一緒ね♪」


「それはもちろんっ」


と仲を深めていった。

もちろん彼女とは少しずつしか話せなかったけど、それでも私にとっては進歩だった。そっちゃんのおかげで話す機会も増えた

数日後


入学遠足という行事があり近くの遊園地に行くことに

グループ決めの時、オリエンテーションのメンバーで良いんじゃないかと意見が出て

それで決定に。7人グループに私達はなり、当日までに予定を組んだ。もちろん最初から決まってるものもあるけど自由時間にはどこ行くとか、何するとか決めといたほうが良いってなった。

そして色々決めて

入学遠足当日


最初は全員でBBQ

もちろんテーブルは一緒に回るグループで

私の右には、葉山っち

左には彼女だった


まだまだ仲良くなってない状態だから緊張が凄くて

その空気を変えてくれたのは、いのとそっちゃんだった


「うさ、食べてなくね?ほれ人参」


「ゆめちー、キャベツもあるよ」


「ちょ、うさぎでもこんなに人参とキャベツ食わん!!!」


「え?じゃあ、うさは馬?」


「いや私人間やし!!いのが馬やろ?」


「えー、くまっちは熊だよ」


「だって、いの」


「え?最終的に俺がいじられてるんだけど」


「熊なら魚食べなきゃだねー。はい、たっくん」


「そっちゃん、それ私が食べようと思ってた肉!」


「ほらほら、奏ちゃん。うさおくんが肉欲しがってるよ」


「葉山っちまで私を男扱いする?」


と6人でふざけ合いに

それを見ていた彼女は、クスッと笑い始めて

私はなんとなく嬉しくなった。


(続きは9月末更新予定。早まる場合はツイートします。)

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