第4話 オタク街道一直線

勁文社けいぶんしゃという出版社があった。

『ケイブンシャの大百科』シリーズやゲームブック『アドベンチャーヒーローブックス』、そしてファミコンの攻略本『ゲーム必勝法シリーズ』で有名な会社である。

『ウルトラマン大百科』や『続・ウルトラマン大百科』などを読んでいたのだが、仲でもトラウマ級に心に残っているのが『世界の怪獣大百科』である。

『世界の怪獣大百科』は特撮はもちろんの事、映画や小説、漫画やアニメなどに登場する怪獣(中には怪獣ではないものもあったが)、そしてUMAまでもが載っていた。

筒井康隆『かいじゅうゴミイ』、人形峠の大蜂といった怪獣(?)に混じってしれっとクトゥルフ(顔がタコっぽくない、目が複数あるドラゴンっぽい感じのイラスト)やツアトゥグアといったクトゥルフ神話の邪神が載っていたりして。

他にもビートルズのアニメ『イエロー・サブマリン』に出てくるグローブ・モンスターやブルー・ミーニー、宮崎駿の漫画版『風の谷のナウシカ』の王蟲オーム、水木しげる『ゲゲゲの鬼太郎』の大海獣など、とにかくチョイスがカオスそのもの。

諸星大二郎『暗黒神話』のオオナムチやタケミナカタノカミが怖くてトラウマだった。

この本が出たのが1982年。僕が小学一年生の頃である。

表紙の『ゴジラ対ヘドラ』のゴジラに騙されて(?)、買ってみたらオタク的情報の混沌の渦。

ちゃんと出典も明記されているから、そういう作品にも興味が湧いて、是非読んでみたい、見てみたい!と思うけれども、アニメや映画は今と違ってサブスクも無いし、小説もマイナー作品が多く、実際に触れたのはもっとずっと後になってから。

しかし、幼少期の刷り込みというのは恐ろしい。原典に触れる度、脳裏に『世界の怪獣大百科』が蘇ってくるのである。正に「あ!これ!進研ゼミでやったところだ!」状態。

こうして余計な知識を貪る様にしながら、僕は着実にオタク街道を一歩、また一歩と邁進していくのであった。

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