RePeaT

ダリア

プロローグ 廻る運命の歯車

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」


 2人分の激しい息遣いと大きな足音。


「巻いたか?・・・ふぅ」

「早く出よう!こんなところにもう、いたくない」


 コソコソと話をしている。


「たしか、出口はこの階段を降りて右側だよな?」

「あぁ、そうだな」


 足音を立てないように慎重に、それでいて早歩きで歩き出した、2人。しかし、何かを感じたのか、2人ともぎこちなく後ろを振り返った。そして、すぐさま走り出した。


 ところが、1人は何かにつまづいて転んでしまった。止まって助けに向かおうとした、もう1人は、全身が震え、身体が硬直してしまっている。


 声を出すこともできないのか、口を大きく開けたまま、ただ虚空を見つめている。しかし、虚空を見つめている割には、瞳はぶれず、一心に何かを見つめているようだ。


 その間、倒れている人の目は、硬直した人の目を射抜いていた。


 強い冷たい風がビュゥッと吹いた後、1人は、身体の硬直が解けたのか、無我夢中になって外に向かって逃げ出した。


 いつの間にか、倒れた人もおらず、そこにはただ静かな夜があるだけだった。

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