決着
クシャルは格闘技の達人だった。
年齢も既に400歳を超えている。
アデラに格闘技の基本を教えたのもまたクシャルだった。
流れるように動き、アデラの拳をかわしていく。
クシャルからは何も手出しをしてこない。
まるで、稽古をつけてくれているかのように、すっと、かわしていく。
アデラが魔術を込めて飛ぶ、得意の0距離からの攻撃。
しかし、それも、片手で受け止められる。
強い。
少しずつ、クシャルからも打撃技が入ってくる。
一つ一つの打撃が重い。
アデラは拳を当てられるのは初めてだった。
口の奥が血でにじむ。
肩、腹、太もも、あらゆるところに、クシャルの拳と蹴りが飛んできて、アデラにダメージを負わせる。
クシャルの右の拳がみぞおちに入る。
アデラは胃液を吐きながら、息が出来なくなる。
まさか、ここで、死ぬのか、そんな風にも思えた。
アデラの動きが止まって、クシャルが止めを刺そうとしたとき、シロがアデラに防御魔法をかけた。直径2メートルの氷がアデラを包む。
クシャルは、ちょっと考えたが、アデラのことは放っておき、ナギの方へ向かった。
自分の城と部下を殺した敵である。
ミッシとカースの戦いはなかなか決着が着かなかった。
しかし、ミッシの速い動きにカースが慣れてくると、形勢が逆転し始めた。
ミッシは強いと言っても、ほとんど実戦を知らない。
カースは数々の修羅場を乗り越えてきた強さがある。
カースは、一度大きく振りかぶってわざとミッシに剣を受けさせる。
そこから、大きく後ろに飛び、距離を取ると、剣の衝撃波を放ち攻撃する。
ミッシにダメージが入った。
そこを逃さず、カースが間合いを詰め、ミッシの心臓を突きさす。
ミッシはそこで、口から血を吐いて絶命した。
ナギは近づいてくるクシャルに幻術を使った。
クシャルは、もう一度メテオが降ってくるような幻覚を見せられる。人間であればそのショックで死ぬほどの恐怖だ。
しかし、クシャルは少し歯を食いしばると何事もなかったかのように、ナギの方へ歩き始める。
次に、ナギは足止めの魔法を使った。
クシャルの足元が底なし沼のようになり、身動きが取れなくなる。
クシャルは大きく後方に飛び跳ねて沼から抜け出した。
さらにクシャルが近づこうとすると、目の前にカースが立ちはだかった。
後ろでは、氷魔法を解かれたアデラもいる。
ナギの時間稼ぎは成功したようだ。
カースとアデラはお互いに補完するような攻撃をする。
カースが上段を攻撃すると、アデラは後方から下段・中段と連続攻撃を浴びせる。
さすがに、クシャルも避けきれずダメージを負う。
クシャルもただ、攻撃を受けているわけではない、まずは、カースから倒すと決めたようで、カースに攻撃を集めてくる。
速く、重い拳と蹴りがカースの体を捉える。
しかし、カースはアーマードラゴンプレートを装備しており、致命傷になりにくい。
魔人と対するとき、カースの剣は光り輝き、カースに力を与える。
今まで倒した100匹、200匹の魔人の力がカースの力になる。
カースに集中しているクシャルの背後をアデラの拳が遂にとらえた。会心の一撃だ。
クシャルは動きを止める。
そこに、カースの剣が迫る。
心臓を貫き、首を落とす。
カースの剣にクシャルの力までも宿った。
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