プリンが好きな女の子 (現代ドラマ)

 俺の名前はかね餠男もちお。突然だが俺には、好きな奴がいる。

 それは、小学校の同級生のりん。あまり表情が変わらない奴だけど、たまに見せる笑顔が滅茶苦茶可愛いんだ。


 で、今日はその凛の誕生会に来てるんだ。最高のプレゼントを用意して。

 大金をつぎ込んで調べた情報によると、凛はプリンが大好物。そこで用意したのがこれ、一個千円もする、超高級プリンだ。

 そのへんのプリンとは違って、オシャレな壺に入ったコイツは、まず見た目からして高級感がただよっている。こいつをプレゼントしたら、凛は感激して、俺の事を好きになるに違いない。

 そら、プリンだ。受け取れ!


「凛、これ俺からのプレゼントだ」

「ありがとう」


 さっそく、スプーンを壺にぶっさして、プリンを口に運ぶ凛。けど……あれ? 思ったほど反応がよくないなあ。無表情のままだし。

 いや、これは照れてるに違いない。心の中ではきっと、俺の事を好きになってるに決まって……。


「凛ちゃん、遅くなってごめん」


 遅れてやってきたのは凛の幼馴染みの、幼馴おさなな染太じみた。染太は安っぽいエコバッグの中から、おもむろに何かを取り出した。


「はい、これ僕からのプレゼント。プリン、好きだよね」


 まさかのプリンかぶり。だけど染太、お前バカか。

 お前のはスーパーで百円で売ってる、普通のプリンじゃないか。俺の超高級プリンのように壺に入ってるわけじゃない、プラスチックの容器に入ってる安物だ。ふ、勝ったな。


 ……って、おや? 凛が台所に引っ込んでいったぞ。お皿を持って戻ってきて、染太から貰ったプリンを皿の上で逆さにして……プッチン!


 ああーっ、今まで無表情だったのに、逆さになって皿の上に投下されたプリンを見て、メッチャ目を輝かせてる!

 山のような形になった、プルプルと震えているプリン。それを眺めるりんの笑顔は、今まで見た中で一番可愛く、幸せそうだった。

 あ、スプーンでプリンをつついた。プルっと波打つプリンを見て、さらに目をキラキラさせた!


 ……ガクッ。

 そうか。凛はこの、プッチンしてプルプル震えるプリンが好きだったんだな。くそ、俺の壺入りプリンじゃ、プッチンできねーよ。

 染太、今回は俺の負けだ。凜、来年の誕生日には、プッチンプリンをたくさんプレゼントしてやるからな!

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