第188話 後後63 何にもない何にもない全く何にもない


泉さんのアジのおかげで、兵たちは動き出し、飯を炊き始めた。

飯の匂いが広がると、人々の気も休まり、ゆるくなる。


野上班と俺らは早々に飯を食い、

領主様の許可を貰い、まだ日のあるうちに先に進んでみることにした。

まだ2刻ほどは明るさは残るだろう。


一刻ほど走ったところに、ほぼ風化しきった村の残骸。


二刻ほどのところ野宿する。光が残る間は水路の中も見ながら走ったが、ここ半刻ほどは暗くなったので見えなかった。


俺と泉さんと野上班の皆は、出てくる直前に領主様に革袋一つ分の酒を各々貰った。

だが、誰も飲もうとしない。


星がよく見える。

当然だが、虫の音もしない。土中にさえ虫もいないのだ。

虫も、バクテリアも、モグラもいない。

だからこその、この土地の荒れ具合なのだから。


時折、遮るものが何もないこの荒れ果てた大地を吹く風の音がするのみ。

髑髏(しゃれこうべ)が風で転がる音すらしない、音を遮るものはその風以外ないだろう。でもそんな音すらしない


ーー


翌朝出発してから2刻も経たない内に街道に出た。多分、あの俺らが通ってきた街道だろう。


「泉さん、あの村、街道沿いに作らなかったのは、なぜなんでしょうかね?」俺

「ああ、備蓄とかちゃんとしていたからだろ?ここの国じゃ、盗賊や領主とかに狙われやすかったんじゃねーかな?あと、今の状態になったときに街道沿いにあの村があったら、難民が押し寄せてあっという間に食い尽くされてたろうな」


なるほど、、

隠し村?


「予測してたんでしょうかね?」俺

「確信だったかもなー」泉さん


そうだな、、、、だろうな。



街道に出てから2刻ほど、日が中天から少し傾いた頃に休憩を入れた。

泉さん達は平気な顔していたが、俺が「けつ痛い、足痛い、腰もいたい、」とだだこねたのだ。

まじ、地べたん寝転がってごろごろしてぇ、、


数日馬に乗りっぱなしって、こんなんなのなー、、、

歩きで付いてきている兵隊とか、理解できないわ、、よくもまぁできるもんだよな?


「もー、先にもなんっも見えないしっつ!!!泉さんっつ!なんか気配とか、しないのっ?!!!」


うっわー、男のヒス?困るわぁ、、(泉)


「・・・・んなも・・、、」

返事が途絶えたんで頭をもたげたガク

見えたのは、アクラをかいて座禅?組んでる泉。


なんか、できる人、だったのかな?

魔法とか、ある世界だしぃ、、、

と少しばかり期待してみる様子のガク。


じっと見つめること数分。

こいう場合、1分なのか10分なのか、体感はかなりデタラメになっているのでわからない。


「ふん、、、」

起きた、つか、目を開けた泉さん


どうっすか?と小声で聞くガク。


「いやぁ、、魔法とかある世界じゃん?なんかあるかな?できるかな?と思ってやってみたが、、無いわw」

・・・・・・・・・・・・


まぁ、努力することはとても良いことでしょう。

期待したのも、俺が勝手にしたことです。

でも、、

なんか、、

返せよ、期待、とか思うよね?仕方ないよね?


「おい、ガク、おまえ、やってみ?」泉さん

・・・

「え?俺?・・そうお?へへへ、、んじゃ、、やってみっかな?」


野上達も、なんかわらんが、人間形態になった。で、真似してやりはじめた。


・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・

あ、、

いや、、

・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・

・・・・・

・・


なんか同時?に、皆目を開けて、

「なんも、」

「何も」

「ああ、同じ」

「うむ、、眠たくなった」

「だよな」

「なんか変な世界に入りそうだった」

「でも気持ちいい?」

「ああ、なんか、なー、、」

「ひまんとき、またやるか?」


へんな感想述べる人狼もいたがw


「・・・・・ずーーーーっと、先に、山があって、その向こうにいけば、普通っぽいね?」

きのう、領主様に報告に走ってくれた人狼だった。


「おまえ、何見えた?」泉さんマジ顔

わしも気になるのである!(ガク)

野上達も顔は平然、でも尻尾でて揺れている


「いや、、詳しくはわかりませんけど、、なんとなく、ですけど、

街道をずっと行った先に山脈あって、それ越えると、緑っぽく普通の風景になって、村で畑仕事する者とか見えたような見えなような、、ほんとに見えたのかなぁ、、、気の所為?」


どっちだよ?

と、思うも、でも、、

どーなんでしょうね?

と思ったので

「どーなのよ泉さん?」

「どーなのよ野上?」泉さんは野上にそのまま振る


「・・・・いや、、、わたs,、そーいえば、、狼長が、大昔になんかそんなことやってたような?」

「そんときの結果は?」

「攻国が滅亡するってやつで、、」

「「あたったじゃん!!」」俺と泉さん


「うーんんんんんん、、、

今よ、先に山脈なんか見えないだろ?

つーことは、早くても一ヶ月くらい先にならんと、着かないわけよ、、」泉さん


何か思い出したようで、

おもむろに懐から筆を出し、舐めて濡らして懐紙にすらすら書き始めた。

半紙にしたら1/4くらい書いたろうか?


「ん、これ、誰かに領主様に持ってってくれ」と、野上に差し出す泉さん。

「俺らは、あと2刻くらい先に行こう」泉さん


ーー


結局、何もなく2刻移動したのみ。川も無し。山も近くにないし、森が無いから水はねぇ?

そこで野営。

と言っても、水飲んで干し肉干し野菜食って、マントにくるまって寝るだけ。

野上達が狼になってよこにひっついてくれる。

モフ暖かいのが嬉しい。


こいつらの毛並み、今回でぼろぼろになっちゃうだろうなぁ、、帰国したら気合い入れなきゃなぁ、、毛づくろい。

などと思いながらモフ睡魔に襲われていった。



翌朝。

領主様の手紙を持って帰ってきた人狼が、泉さんの前で寝ていた。手紙を両の前足でかかえて。

なんか可愛かったし、泉さんもまだ起き出していないんでそのままにしておく。



気持ちのいい朝。

でも、大気の香りが全く?

木々の匂いも、潮の香りも、土の匂いもなーんも、、

ほこりっぽいのみ、、

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