第154話 後後29 船の旅初日


全木造船。西洋式の船。でも結構幅広で安定抜群。貨物船だからだろう。

各部は磨かれてて、でも手沢が年季を見せつけている。歩いても、ドアを開け閉めしても、かなりしっかりしているのがわかる。船だからね、半端に作れないよね、、半端だと荒れたら歪むからな。

船の客室部分はそう多くはなかった。貨客船だからね。全部で20部屋くらい?8畳か10畳くらいの狭い部屋でベッド2つで。小さい窓、勿論ガラスは無い。高価だからね。

なので、寝る時以外はほとんど外に出る客達。

食堂は甲板のひとつ下で、明かり窓が多く明るい。基本売店みたいで、食事の時以外は茶しか作らないのかな?みたいな感じだ。


出港して数時間。進行方向右手の遠くに岸を見ながらの帆での航行。

うるさくなく、風と波の音のみで気持ちが良い。


「ダイジョブっすか?」

「うん、、まだ、平気だ、、」泉さん


うーん、子供の頃はなんか酔い易いっていうけど、それみたい。


「酒で酔うのも船で酔うのも一緒だ、っていう話を聞いたことありますが、、飲みますか?」

「・・・・そーだな、、そーしちまうほうがいいかな、、」


「燗?冷?」

「冷がいい、、」

んじゃ、と、俺は食堂に走る。



「おまちです!」

小瓶の酒を差し出すと、泉さんは瓶からそのまま飲む。


「っぷはぁー、、、、、なんか一息ついたわ、、・・・・・あ、いい感じ?」

速攻?いや、きぶんだろー


少しニヤニヤ?ヘラヘラ?顔になる泉さん。安心してきたのだろうか。

ごくごくっ、、

「まぁ、なんだ、、にさんちで慣れるっつーから、、それまで酒飲んでりゃいーわけだ、、はははっ!」


「飲みすぎると、こんど酒に酔いすぎで、一緒ですよ?」

「あー、だいじょーぶだいじょーぶ♪」

酒飲みはそー言うんだよなー、、、


だと思って

「はい、さけのつまみ」

と、後ろに隠していた皿に載ったケーキ3つを出す。


「おおおお!!!気が利くなっつ!!!!」

酒よりケーキの泉さん。

船酔いがおさまらなきゃ出さないつもりだった。


甲板その場に座り込んで、ケーキを食いながらちびちびやる泉さん。

どこでもいっしょである。


俺も隣に座って、、ごろんと横になる、

風が気持ちいい、かすかな揺れ具合も、なんか眠気を誘う、、このイイ天気がわるいんだ!ってかww




「おい、、ガク、、起きろ、、風邪引くぞ?」

「う、うーん、、あと5分、、、・・・あ、、ちがうわ、、、」自分の変な寝言に起きてしまう。


うわ、、

「少し寒くなってきましたね、、」

「おう、、日がもう沈みそうだからな」

西を見ると


「あー、いい夕焼けですねぇ、、」

夕焼けというより、、南方でも冬、乾季?なので雲は見えない、空全体の色がうまーくグラデーションに染まっている。


「こりゃ、星空もすごいかもなぁ、、」

「ええ、農国の山の方で見たのとは、また違うモノでしょうね、、」


「おもしれーな、、船旅も、、、、」

「ええ、、」



それから少し空を見てから、食堂に降りていった。




「あったけー!」泉さん

「や、これは、、暖房?いや、、厨房の火のせいか、、」


窓はもう締め切られ、魔法の灯火らしきもので食堂は明るく照らされていた。

客の大半がもう来ている様子。


俺らも空いている席に座る。

座ったら、順から食事を持ってきてくれるらしく、もう食べている客も多い。


ほどなく2人分持ってきてくれた。

「船旅って初めてだけど、気持ちいいもんだな!」

感動をした感想を言いたいのだろう、その持ってきてくれた従業員に言う泉さん。


「でしょ!僕も船に乗って、好きになっちゃって、今ココですよ!。そのうち甲板員になって、外洋に出たいっす!!」

「外洋って、、荒いんじゃないの?」俺

「そうですね、でも、それを味わってみたいっす、海の男!って感じでしょ?!!」

「すげーなー、、、オレは酒飲むまで船に酔ってたぞ?」

「あはは、そんなの慣れでなくなりますよ!」

すげーなー、、と感心する泉さん

「ではごゆっくり!船旅を楽しんでください!!」


自分と同じ船好きは、やっぱり嬉しいのだろう。


食事しながら晩酌を少しして、程よく酔って、うまく寝られた。


寝入りばな、、「あ、、夜空見るの忘れてた、、」と思い出したが、そのまま寝入ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る