第55話 中−21 誘拐・奴隷売買


「ボクは、、、誰?」

「「知るかよ!!!」」 反射的に!!


「おまえ、覚えていることをすべて話してみな、そこから推測してやる」泉さん

・・・・

「どっかに入れられていた。出されたので、逃げた。」

「どっかって、牢屋とか?」俺

「んー、、檻?」

「小さい、狭かったか?」泉さん

「狭かった、立てなかった。」

「飯は?」

「あんまり食べた覚えない、何回か、、まずかった、けどすごくお腹空いていたんで食べた。」

「そこに入れられたときのことは?」

「んー、、わからない、覚えていない」

「なんか、ひどく折檻されたとか、記憶に在るか?」

「んー、、怖い、とっても怖いことだけ、、」


「馬車に載った覚えは?馬車に揺られているようなこと、あったか?」

「・・・覚えていない、、、」


「悪いが、、おまえの背中を見せてくれ、、折檻や虐待があったら、何か傷があるはずだから」

「・・・・・・」 ずるずると仕方がなく上着を脱ぎ、服の背中をまくり上げた。

・・・・・・・・

「ひでぇなぁ、、」

俺は言葉もなかった、、、

泉さんはすぐに膏薬を出したが、、

「少し待ってろ、」と下に行った。

ほどなく、熱湯らしきものの入ったデカイヤカンを持ってきた。

手洗いに水浴び用の桶が在る。そこに熱湯を注ぎ、丁度よい湯加減にする。

「おまえ、お湯をあびて、体をあらってこい、石鹸は手洗場にあるのを使え、洗い用の手ぬぐいはコレを使え。

出たら、このタオルで体をふけ。」

「学、お前の着替えあったな、こいつはどうにか着れるだろうから、かしてやってくれ。あとで買ってくる。」

俺は着替えを出した。


そいつは手洗い場に行った。


泉さんは

「奴が出たら、傷にこの軟膏をぬってやれ。塗り込めよ。俺は着る物を買ってくる。」

と出ていった。


半時ほどたって、でてきた。

「さぶい、、着替え、これでいいの?」

「ああ、そこのを、、、きゃぁあああ!!なんだおまえ女か!隠せ!前を隠せ!!」

なんで俺がきゃーって言うのかわからんが、、

手の間から見ると、キョトンとしてやがりますが何か?!!!

仕方がないから

「早くその着物を着ろ、風邪ひくだろ!!」

そいつは手早く服を着た。


椅子に逆に座らせ、背中をまくりあげ、軟膏を塗り込んだ。

「布団に入って寝ろ。あとは俺と泉さんと”処理”しておく。俺らが出ていった後は、俺と泉さん以外の誰の声でも絶対に扉をあけるなよ?返事もするな。俺らの場合、声を出し名前を言うから。”学”と”泉”という名前が出て、しかも俺か泉さんの声の場合だけ、あけろ。わかったな!」

「ん」

「よし、安心してゆっくり寝ろ」

テーブルに水と食い物を少し置いておく。


泉さんはなかなか帰ってこない。




外に走り出た泉。

服屋をみつけ、少々大きめの服と靴を買った。見えにくい方が良いだろうと大きめのサイズ。

ぶかぶかなのもあやしいので、間にふくらませるようなセーターなども。肌寒いし丁度よかろう。

それらが入った袋を担いて店を出ると、、

「あ!貴様!ちょうどいいや、あの連れがいない、ガキだけだ、捕まえろ!売り飛ばしてやれ!あいつの代わりだ!!」

ぴきッ、青筋立てる泉


ひょいぽーん!どしゃ、ひょいぽーん!ぐしゃ!、ひょいっぽーーん、どげしゃ!!・・・

全員のびたか首の骨を折ったか。

生きているやつの一人、指揮を取っていたやつだ。

ボキッ!ボキッ!ボキッ! 指3本で目が醒めたようだ

「うぎゃー!!て、てめぇなにしやg

グシャ!片目に泉の指が根本まで入る

「うぎゃーーーー!!

「うるさい、残りもやってほしいのか?黙れ!」

「・・・・・」

「お前らのアジトを教えろ。すぐに、其れ以外喋るな」

「この先の・・」

説明し終わった

「で、お前に先導してもらう。さて、嘘だったらどうなるかわかるな?勘違いなら今すぐに訂正するチャンスをやる、どうする?」

その男は違う場所を言った。

「コレを見ろ、」と、泉は五寸釘を出した。で、それを持った手をスッと、、

釘はひゅんと見えない速度で飛び、倒れてヒーヒー言っている奴の喉に刺さった。

それを見た男は目を限度まで見開いた。

「お前が先導しろ、わしはお前の直後を歩く。逃げてもいいが、動いている獲物をやるほうが得意だからなわしは。」



「あ、あの黒い扉の邸だ、、」と言って振り返る男

そこには誰も居ない。



泉はその小さな邸が見えたとたんそれだとわかった、男の後ろから離れ、通りに並ぶ家々の隙間に入り、屋根に登った。

荷物をその屋根に置いてから、屋根から屋根を走り抜け、その勢いで通りを飛び越えて、その黒い扉の小さな邸の屋根に飛びついた。


音もなく屋根瓦を何枚かはずし、屋根板を小刀で少し斬ってから板をずらして体を潜り込ませる。


その頃、男は逃げ出した。それほどバカではなかったのだ。

アジトの場所をばらしたのだ、自分が帰った後に敵が来たら、すぐに怪しいと思われるだろう。しかも大怪我をしている。拷問され喋ったと思わないほうがどうにかしている。よって、帰ると命がない。なので、逃げるしかない。


泉はそのまま屋根裏を音もなく伝う。

下から人の声がする場所があった。

羽目板の隙間からのぞくと、2人の男が喋っていた。

話の内容から、一人は領主。もう一人の方がこの邸の主、違法奴隷バイヤー兼誘拐犯グループ主犯だとわかった。

話を聞いていると、拐ってきた者達は、ここではなく街の商屋の地下に監禁されている様子だ。だからあいつも運良く逃げ出せたのだろう。この邸からだと、でかい門が閉じているのでそこで捉えられてしまう。

肝心の監禁場所は、こいつら”商会”としか言わない。が、行けばなんとなくわかるだろうと思った。

なので、


泉は天井から屋根に戻り、そのまま塀の上に飛び、外に出た。

何軒かの店を周り、結構な荷物を担いで、その邸の裏の人目につかないところで、

いろいろ小細工をし、再度そのでかい袋を担ぎながら背を低くして邸の周囲をぐるっとまわった。

流石領主がからんでいるので誰も手を出さないのだろう、警戒を必要としないので見回りもいない。

最後に、なぜか中身が半分ほどになったデカイ袋を玄関先において、泉は離れて、そこから尻に火布を付けた小刀を飛ばした。


どっかーん!!

しゅしゅしゅしゅ、、ぼーん、っしゅしゅしゅしゅぼーん、、しゅしゅしゅしゅぼーん!!


玄関が爆発し火が起こり、そこから両脇に火が走り、ぼーんと火柱が立ち、更に火が走り、裏側でも火柱が立つ。


邸はモルタル塗りでも中は木造。この世界じゃ、見栄えだけの安い作り。

建物の木はよーっく乾燥してなければ使えないので燃やすには丁度よく乾燥している。


そんなかでも根性あるというかゴキみたいなやつは外に逃げ出してくる。

それを一匹一匹泉は的確に一発で仕留めていく。釘で充分だ、人は強い魔獣ではないのだから。


火の勢いが強くなり、その邸の中に生き物の気配が無くなったのを確認し、泉は着物の入った袋を回収し、宿に戻る。


「もどったぞー」

「泉さん!心配してたんっすよ、もう!!」

「あー、ほぼ終わったぞ?」

「へ?」

「親玉と、その仲間のここの領主は蒸し焼きだ。あとは監禁場所がこのちかくら辺の”商会”らしいので、そこにいって解放するだけだ。領主が犯人なんだから街の衛兵も怪しいな。」

「おまえ、わしら以外のモノが来たら、絶対声を出すな、物音一つ出すなよ?」

と泉さんが子供に命じ、俺らは外に。


宿を出るときに「ここらで商会っていえば、どこだ?」と宿のおやじに聞いたらおしえてくれた。

「でも、そこ、危険ですよ?やめたほうが良いと思いますが」

「ああ、ありがとう、でもわかってる。だいじょぶだ」泉



もぬけの殻だった。本陣がとられたら、そりゃ即逃げ出すわな、、何もかも放置して。

被害者の子どもたちを衛兵に預けても危険なので、とりあえず宿に。

宿のおやじは協力的だった。

その晩来た御者達も協力的だった。

その中の一人が、王都に行くと言うので王城に手紙を頼んだ。

多分、こんな場所から王都直通の定期馬車なんぞなかったんだろうが、話ているうちにそう言ってきた。ありがたく話に乗らせてもらった。


数日後、王都から走りっぱで数人の騎士が宿に着いた。

「追って本隊が来ます。」

その数人でその犯罪に関わった者達を探し出し、大半をぶった切った。抵抗しなければ捕まえたのだが、違法奴隷売買は即死刑。なので抵抗しないやつは居ない。

衛兵の大半も共犯らしく、抵抗した。わずかに見習いの子供くらいは何も知らなかったようだった。


泉が保護した子も、王都に送られる。将軍直営の孤児院に入れられ、身元が判明し、売られたのでない場合+本人が帰りたいと言った場合のみ、家に返すという。


ーー


「泉さん、独壇場でしたね。俺出る幕全くなし」

「たまにはこのくらいいいだろう?」



もしかしたら、御者たちは、このことすら考慮に入れて、2−3日いろと言った?、、、なんてこたないよなぁ?

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