欲望を素直に解放すること

どうすればストレスをやっつけられるだろうか。リラックスすることだろうか。いや、それは違う。リラックスというのは心と身体を休めることであって、ストレスへの根源的な対処方法とはならない。


もちろん、前提として、一切のストレスを感じないというのは不可能だ。人間は──というより、だいたいの動物は、ストレスを感じるようにできている。それはストレスというものが、生命活動に必要なものだからだろう。我々はストレスのおかげで危険を察知することができる。ストレスとは、「自身にとって悪いことが起きている」という、脳からの信号である。


危険を教えてくれるのはありがたいことだが、問題はそれによって、自律神経がダメージを負ってしまうことだ。自律神経がダメージを負うと、身体にさまざまな異常が発生する。頭痛、腹痛、めまい、吐き気、息切れ、疲労感、手足のしびれ……挙げていけばきりがない。このような事態を回避するためにも、ストレスは即座に解消されなくてはならない。


ここで前置きしておくことがある。それは睡眠の重要性だ。どんな対処をするにせよ、睡眠が足りていなければすべては無駄である。そのためここでは、「充分な睡眠をとったうえで」という前提で話を進めていく。


さて、リラックスは根源的な対処方法ではないと最初に述べた。このことは姫呂自身の経験から、まちがいないと言える。そもそもリラックスしようとしても思い通りにリラックスできるわけではないという問題があるが、たとえ上手にリラックスできたとしても、その後に待っているのは虚無感だけだ。なぜ虚無感が? それは正気に戻った反動だろうと思われる。リラックス状態というのは一種の現実逃避であり、再び目覚めれば現実を意識せざるを得ない。その落差で虚無感が生じるのだ。


ストレスへの根源的な対処法、それは欲望を解放することだと言える。簡単な理屈だ。欲望を解放すると快感が生じる。快感はストレスを打ち消す力となる。ストレスがマイナスなら、快感はプラスだ。マイナスにはプラスをぶつければいい。


ただし、マイナスとプラスをぶつけてゼロにしてしまうという考えでは駄目だ。ふたつをぶつけた結果、プラスのほうが残っている状況こそ目指すべきだ。無論、マイナスのほうが残っている状況なぞもってのほかである。経済のように考えればいい。収支は赤字ではなく、黒字であるべきだ。


つまり、ストレスを上回る快感を自分自身に与える。これができればストレスは問題にならない。


一般的に、ストレスで悩んでいる人に対してはストレスを減らすよう促すのがよいとされているが、これはコストカットだけを促すようなものだ。ストレスを減らすことももちろん重要だが、一番考えるべきなのは、どうやって快感を得るかだ。


そのためには、欲望を素直に解放することを覚えなければならない。しかし、現代人にはここが難しいかもしれない。WEBの世界を見ていてよく感じることだが、どうも理屈っぽい人が増えたように思う。この「理屈っぽい人」というのは、理屈を駆使している人のことではない。自分の欲望を理屈っぽい何かでごまかしている人のことだ。


欲望を素直に解放することができない人は、ストレスが溜まっていくばかりの状態にあるから、次第に余裕が失われていく。その結果、やたら攻撃的になったり、あるいは精神を病んだりする。姫呂は後者だ。


しかし、最近のWEBにおける炎上を見ていると、前者の人が増えてきたように思える。以前ならスルーしていたような、些細な過ちにさえ大勢で噛みつく。当人たちは気づいていないが、傍目から見れば明らかにストレスコントロールができていない。そもそもWEBを怒りを吐き出す場だと勘違いしていることさえある。だが、いくら怒りを吐き出したところで、怒りが収まることはない。一時的には気持ちよくなるかもしれないが、怒りの源になっているストレスはマイナス値のままだから、またふとしたきっかけで怒りが湧いてくる。


このような状態を抜け出すためには、自らストレスコントロールを学ぶしかない。他人が自分のストレスをどうにかしてくれることはない。結局のところ、自分の心は自分で面倒を見るしかないのだ。

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