花より団子よりビール
今日俺、南雲透は西浜さんと浅井先生と3人でお花見をしている。どういうことかと言うとまず浅井先生に電話をもらったところから話が始まる。
『南雲くん、明日原稿を取りに来る予定だったわよね。今日でもいいかしら』
「ええ、大丈夫です」
『時間は11時くらいでお願いできる? じゃあよろしくね』
そして指定の時間に伺ったら弁当箱を持たされ近くの公園に連れていかれ、そこで西浜さんが待っていた。
「あの、これはどういう???」
「お花見よ」
「お花見です」
良い笑顔で2人が答える。ビニールシートは既に敷かれていて、いそいそと弁当が広げられる。俺が先生に持たされた弁当箱にはおにぎりがたくさん入っていて、西浜さんが持ってきていた弁当箱にはおかずがたくさん入っている。そしてなんとスープジャーまで用意されていた。この人は神かなにかだろうか?
「俺なんにも持ってきてないですよ」
「そうね。だから今度お菓子を差し入れてくれると嬉しいわ」
「いい案ですね先生。南雲さんのお菓子は逸品ですよ」
「楽しみだわあ」
浅井先生は既にビールを空けながらおにぎりやら卵焼きやらを頬張り、西浜さんもおにぎりとから揚げを熱心に咀嚼している。かしこまっているのが馬鹿らしくなったのでご相伴に預かることにした。
「……せ、先生? このおにぎり、なんでこんなにおいしいんですかね」
「そう? 普通じゃない?」
「俺が米丸めたってこんなおいしくならないです」
「本当に浅井先生のおにぎり美味しいですね。塩が全体に回ってるんですかね」
「そうね、手塩じゃなくて先に全体に塩をしてから握っているわ」
なるほど。それだと満遍なく味が付いていておいしいのか。納得しながらおかずにも手を伸ばす。言わずもがな、はちゃめちゃおいしかった。
「西浜さんのおかずも美味しいですね。間違いなく確実においしい」
「ありがとうございます」
優しい笑顔の西浜さんに胸がときめくばかりだ。3人でおいしいおいしいと食べているうちに(先生は一人でビールも飲んでいた)弁当箱は空になった。全員でごちそうさまをして一旦一番近い先生の家に移動する。時間に余裕があったので片付けを買って出て西浜さんには先に帰ってもらった。
「片付けしてくれてありがとうね、南雲くん」
「いえいえ、ご相伴に預かっちゃいましたから」
先生はお茶を飲みながら仕事を再開している。
「最近西浜さんが幸せそうで嬉しいわ」
その発言にうぬぼれていいのかどうか、俺にはわからなかった。
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