大きすぎる文字、寄せ書きからはみ出る
部活の先輩たちに宛てて書いた寄せ書きを卒業式の後に渡した。その後帰ろうとしたら先輩の一人から声をかけられる。
「京極君」
「あれ、先輩どうしたんですか」
「ちょっと言いたいことあって」
なんだろう。その先輩は特に親しくはなかった人で、これまでも2人で話した覚えすらない。そもそも女子部の方の人だから寄せ書きすら書いてない。
「京極君さ、好きな人いるでしょ」
「……」
「そんな警戒しないでよ。見てればわかるし。あたしが言いたいのはさ、そんなはたから見ててわかるくらい好きならぶつかっていきなよってことよ」
「なんでそんなことを」
「それは自分で考えて。これ以上言っちゃうのかっこ悪いし」
じゃあね、と先輩は去って行った。なんだろうな。でもまっすぐ帰る気が失せて図書室に行くことにした。
図書室では運よく僕の好きな人、浅井紺乃さんが一人でカウンターに入っている。なんて声をかけようか悩んでいると向こうが先にこちらに気付いて手を振ってくれた。
「こんにちは」
「こんにちは。今日も何かお探し?」
「そういうわけじゃないんだけど」
そういうわけじゃなくて、ある意味そういうわけなのか。僕が探しに来たのは。
「探してた人はもう見つかったから」
そういうと浅井さんは口をもごもごさせて目をそらした。彼女に何というべきかわからないけど、何も言わないわけにはいかない。
「明日から期末試験だけど浅井さんは勉強してる?」
「うん、ぼちぼちかな。京極くんは?」
「ちょっとだけ。特異な科目は見直すくらいでいいんだけど日本史が覚えられなくて」
「歴史系は全体の流れを見ていかないと、ピンポイントで覚えるのは難しいんじゃないかな」
「そうだよね。興味ないから全然覚えられない」
ぽつぽつと勉強のコツを教わったり教えたりする。お互いノートを出してあれこれ言い合っているうちに、ふと浅井さんが「ここ、大事だよ」と僕のノートに丸を付けた。その丸がすごくきれいで、やっぱり僕はこの子が好きだと思った。
「浅井さん、期末試験終わったら、どっか遊びいかない?」
「いいよ。あっ」
「無理ならいいけど」
「えっと、無理じゃないです。大丈夫です」
つい勢いで誘ってしまったけど、OKをくれたしこれを目標に試験を乗り切ろう。
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