114 天使と悪魔の声

 仕事中に財布を拾った。


 中身を見てみると一万円札が数枚とカードが何枚か。


 途端、俺の中の悪魔と天使が耳元で囁き始める。


 悪魔曰く『バレやしないよ。頂いちまえよ』


 天使曰く『ダメだよ。交番に届けないと』


 俺は交番に向かい、歩き始めた。



 交番では若い男があくびをしながらスマホをいじっている。


 俺はそいつに無言で財布を渡した。


 そいつは財布の中身を確認し、にいと口角を上げた。


「せんぱーい、また中身抜いたでしょー。バレバレですよぉ」


 俺はそいつに一万円札を一枚、ぺらっと渡す。



 俺の心が充足されていく。

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