109 使い道

「……一、二、三、枚、か……」


 手元にあるお札の枚数を数える。今月もまだ始まったばかり。はたして今月も乗り切れるのだろうか。使い道を思案していた最中、


――ピンポーン――


 玄関のチャイムが鳴る。途端俺は体をこわばらせる。一秒が一分にも一時間にも感じる中、ゆっくり……ゆっくりと玄関に足を運びドアスコープを覗く。暗がりの中映っていたのは、大家だった。ゴクリと生唾を飲み込み、俺はドアを開けた。


「……大家さんですよね」

「当たり前じゃない。あなたねぇ、先月の家賃、振り込まれてなかったわよ」

「あっ……すいません。直ぐ払います」


 安堵の中俺はリビングに戻り財布の中から抜き取ったお札を大家に手渡した。


「……三、四、五……次はちゃんと払ってよね」そう言うと大家は勢いよくドアを閉めた。



 リビングに戻った俺は窓の外を見て思わず息を飲んだ。



 ……お札は残り二枚。次はどこに使おうか。

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