079 長寿の薬

「本当にその薬で寿命が延びるんですね?」


 癌で余命半年を宣告されていた俺はある博士の元に訪れていた。


「そうじゃ」一息つき、博士は話を続ける。「被験者のデータから算出するに寿命は凡そ五倍程になる。もっとも動物実験では成果が見れなかったがな」


「副作用は?」

「肉体的な副作用は今のところ出ておらん。ただ、慢性的な焦燥感があるとは報告されておる」


 話を聞き、俺は薬を飲むことにした。どうせ短い余命なのだ、今更焦燥感などという精神的副作用は気にはならない些末な問題だ。俺は書類にサインをし、博士から薬を手渡された白い錠剤を飲みほした。


 薬を飲んで五分程経った頃だろうか、体に変化が表れ始めた。肉体的な副作用はないと言っていたが手が思うように動かなくなってきたのだ。自分の手を見つめる私を見て何か察したのだろう、博士がゆっくりと口を開いた。



「ど~~~~~う~~~~~だ~~~~~あ~~~~~? の~~~~~び~~~~~た~~~~~か~~~~~?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る