055 ハズレ付き自動販売機

 運動不足の俺は夜ジョギングに出かけるのを日課にし始めた。


 毎日同じルートだと飽きてしまうので出来る限り違うルートを取る事にしたのだが、ある日変なものを見つけてしまった。


 町はずれにある古びた自動販売機だ。


 パッと見はどこにでもあるような自動販売機なのだがデカデカと『ハズレ付き』と書いたステッカーが貼ってある。当たり付きの自動販売機は見たことがあるがハズレ付きの自動販売機というのは聞いたことすらない。早速お茶を買ってみるが演出らしい演出は起きず取り出し口からお茶が出てきただけだった。


 それから俺はジョギング中何度かハズレ付きの自動販売機に挑戦してみたが一向にハズレが出る気配はなかった。


 そして一ヶ月が経ったある日、遂に俺はその日を迎える。いつも通りお茶のボタンを押した俺は直ぐにお茶が落ちてこないことに気付いた。そのまま自動販売機を眺めているとダミー商品を照らすライトが点滅し始め『チャラリラーン』という間抜けな機械音が響いた。途端、取り出し口に何かが落ちてくる。俺は少し興奮しながら取り出し口に手を入れ、落ちてきたものを取り出した。


 出てきたのは空のペットボトルだった。ラベルは真っ白で何も書かれていない。


「ハズレってそういう事かよ……」


 ひとりごちながらペットボトルを眺めていたが、蓋の上に何か書いてあることに気付いた。


「ん? “当たる”?」


 蓋の上に書いてある文字に首をかしげる。『当たり』だったら意味は分かるが『当たる』とは何だろう――そんな事を考えていた刹那、後ろから強烈な光を浴びせられた。


 慌てて振り返り全てを理解した時には遅かった。

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