004 お化け屋敷

 怖いと噂のお化け屋敷にやってきた。彼女のいない俺はぼっち参戦。入口の大行列に並び周囲を見渡すと数名しかぼっちは見当たらない。……正直周囲の目が痛い。


 お化け屋敷の出入り口は別々なようで、出てくるお客さんを直接見ることは出来ない。なので体験者の表情は分からないがお化け屋敷の中から時折「ぎゃああ!」とか「やめてくれぇ!」と叫び声が聞こえてくるので噂通りかなり怖いのだろう。


 そうこうしているうちに俺は遂に列の先頭まで進んだ。正面を見ると同時に入口の案内係が俺に話しかけてきた。


「お化け屋敷へようこそ! 中に入れるようになるまで五分程かかりますのでそれまでにアンケートの記入をお願いしまーす」そう言って俺に一枚のアンケート用紙を渡してきた。


 アンケート内容はお化け屋敷に関係ないものばかりだった。家族構成やら仕事について、現在住んでいる家の種類、それに彼女(彼氏)の有無など何の為のアンケートなのか皆目見当もつかない。それでも当たり障りのない内容なので『実家に両親と兄夫婦』『工場勤務』『アパート賃貸』『彼女なし』と正直に記入し係員に渡した。


 アンケートに軽く目を通した係員は不意に笑みをこぼし、口を開く。


「それではお客様の番になりましたのでこちらに貴重品を預けた上ご入場くださーい」俺はスマホと財布を預け恐る恐るお化け屋敷の入口へと体を通した。




 その後俺は何とかお化け屋敷から外に出ることは出来た。ただ、途中意識を失った俺は出口を通らず従業員用の裏口から外に連れ出されたのだ。でも……


「てめぇら! いつまで休んでんだ! さっさと土を運べ!」


 お化け屋敷より怖い世界から抜けることが出来なくなったようだ。

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