ある日曜日の誘惑
晴れ時々雨
🐷
飾り付けられた食卓の上で体に料理をなすりつけている女がいる。ミセス・チャイルドにそっくりな女は恍惚の表情を浮かべ、皿の上の食べ物を素手で鷲掴みにして、おそらく絹性であろう服を次々と汚していく。テーブルの下に投げ出されたカトラリー。きっと食べているうちに興奮が止められなくなったのだろう。
若いのに偏屈なミセスに似てないといえば似ていないその女は、彼女だと思えば今まで感じたことのない感情が湧き上がってくる。
彼女はワイングラスに手を伸ばし襟ぐりを指で広げ、服の中に中身をこぼした。赤黒い液体がスカートの裾から流れ出る。色白の脹ら脛を伝い、まるで年増女に訪れた初潮のようで、えも言われぬ淫らさがある。
かなり凝った装いであるのに爪先は裸足だった。足下にアルコールの水溜まりができ、それにしばし目を奪われると顔が見切れた。
どういう訳か、私はある壁に設えられた丸窓からそれを眺めている。この壁は昨日までスチーブンソン家の納屋だった。
それまでの納屋兼家畜小屋には一匹の雌豚が細縄で括り付けられており、そうかミセス・チャイルドはスチーブンソン家の飼い豚だったかと頭の上に電球が灯る思いがした。
板張りの納屋の外壁はいいようにへばっていた。白っぽいペンキもところどころ剥がれ、酷いところは角が浮いていたが、劣化が過ぎてささくれてはいない。みんな削られたように丸みを帯びている。
しかしこの秘密めいた丸窓は不細工な位置にあり、覗くのにおかしな体勢を取らねばならなかった。大体私の臍の辺りにあるのだ。屈んでも立ち膝でも上手い位置に来ない。それなのに中では見逃せない催しが繰り広げられている。
すると後ろから凄い鼻息と荒れた足音がして、振り返ると丸々と太った豚が一匹、私の定位置に横入りしようと息巻いていた。私は思わず場所を譲った。彼、だか彼女だか知らないが、家畜動物の勢いに負けたのだ。
しかしもしこれが彼女で、スチーブンソンの烙印が押されているのなら、ここで変態ショーを見る権利は彼女にこそあるのだろう。彼女なら。
私はなりふり構わず藁の散らかる地面へ仰向けになり、豚の胴の下へ潜った。印を探そうと思ったのだが、乳牛の焼印は尻にあったことを思い出し、そこから這い出して後ろへ回った。汚物やら何やらでかなり薄汚くなっていた臀部をそっと手で払うと、あった。
スチーブンソンのSが四角に囲まれた印の古い痕がケツにあった!あったぞ!あった!
ということで、その場所を住処にしている本人に特等席を譲り、膝の泥を払って教会へ向かった。
ある日曜日の誘惑 晴れ時々雨 @rio11ruiagent
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