明日が希望から憂鬱へと変わった瞬間

乃木希生

第1話

いつからだろう、明日が来るという事実に耐えきれなくなってきたのは。


いつからだろう、誰にも迷惑を掛けずに明日から逃げる方法を真剣に考え始めたのは。


いつからだろう、明日が来るという事実に対して何も感じなくなったのは。


いつからだろう、明日が来なくなるという事実に怯え始めるようになったのは。


いつからだろう、明日が来る来ないという事すら感じられなくなったのは。




明日から逃げる唯一の方法は、死ぬことでしかないことは分かっている。


しかし、自ら死ぬことを選ぶことは、今の社会では認められていない。


認められていないから、自死は多くの人たちに迷惑を掛けてしまう。


そして、一時の迷惑だけにおさまらず、一生の呪いをかけてしまうこともある。

さらに厄介なのは、その呪いは、かけたいと思う人ではなく、かけたくないと思っている人にだけかけてしまう。



生きる以上、『明日』から逃げる方法はなく。

死のうにも、迷惑をかけたくない人にばかり迷惑をかけてしまうから自死すら選ぶことが出来ず。



何もかも放り出して生きてみて、もしも復活できた時に、その空白期間を許容してくれるほど社会全体に余裕がない現代では、こうなってしまっては八方塞がりでしかない。





だから僕は結局、生きたくない毎日を仕方なく生きることしか選べない情けない人間だ。


いつの日か、生きる権利を主張されるだけではなく、自死の権利も許容される社会が訪れる事を願う。

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