3.1
教師の声だけが聞こえる教室で私はいつものように、ノートにメッセージを書き込んでいく。
ねぇ、貴方が望んだ結末はこれなの?
『そうだよ。あれが私の望んだ幸せの形』
本当にそうなの?
『そうよ。貴方からもあのオヤジと同じこと言われるとは思ってもいなかったわ』
私のメッセージの下にドンドン書き込まれていく返事。それを見て私は苛立ちを覚えた。
(本当はそう思っていないくせに)
私はそう心中で毒づき筆を置いた。
私と彼女が直接コミュニケーションを取ることは出来ない。こうやってノートを通した筆談が私達唯一のコミュニケーション。
顔を確認することは出来ないけれど彼女はきっと清々しい顔なんてしていないことを私は知っている。きっと彼女が私の場所に居たら羨望の眼差しを彼らに向けるだろうことも分かっている。
それを指摘したとしても彼女はそれを認めないことも。
私は面倒臭いなぁという気持ちを込めハァと溜息を吐くと、窓の外を眺める。
早く素直になってくれればこちらとしても楽なのに。
素直になればきっと彼は彼女に手を伸ばしてくれる。
彼は優しいから。一見ぶっきらぼうだけど誰かを見捨てられないとても優しい心の持ち主。
そんな彼なら許してくれると私は知っている。
だけど、私がそう言っても彼女は信じないだろうな。
まぁ、無理もないか。彼女の過去を考えれば素直になり難いのは仕方ない。
自分のせいで、彼を死なせてしまったのだから。
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