第10話 友人


 水瀬と会った次の日から、俺は親戚の家に年明けの挨拶をしに県外に出ていた。

 その間に、水瀬からこの間の件で話があるんだけど会えるかな?とメッセージが来ていたが、生憎俺は県外だ。会うことは出来ない。

 『電話で良いなら話を聞くぞ』、と一応メッセージを返すしたが、水瀬からは『出来れば電話じゃない方がいい』と返事が返ってきたので、冬休みの間は結局話すことは殆どなかっあた。


 久々に制服に袖を通し、歩き慣れた通学路をイヤホンを付けてポッケに手を突っ込みながら歩く。

 冬休みで生活リズムが崩れた影響か、普段は見ていた生徒達の姿が見えないので、本当に今日から学校が始まるのか不安になった。

 目の前の信号機が赤になり、足を緩めのんびりと歩いていると、突然背中を押されよろめく。


「っと、危ねぇ」


 何とか体勢を整え、怪我をしなかったことに対する安堵の息を漏らした後、背後に非難がましい視線送る。


「いてぇよ」


「すまん。すまん。ミナが見えて嬉しくなってつい。許してちょ」


 そこには全然反省しいる様子の伺えない天パ黒髪の友人バカ。 有馬ありま りんが、憎らしいほどに爽やかな笑みを浮かべていた。

 音楽を止めてイヤホンをケースにしまい、俺も正月の挨拶をする。



「はぁ、やるなら次から加減しろよ」


「さっすが、親友懐が深いな。あっ、忘れてた。あけおめ、ミナ」


「あけおめ有馬。珍しいなこんな時間に会うなんて。いつもギリギリ遅刻するかしないかくらいの時間に来るのに」


「いつも遅れる原因は寝坊だからな。今日は寝てないから早いってわけだ」


「冬休みの課題やってたからか?」


「ザッツライト、その通り徹夜して死ぬ気でさっきまでやってた」


 有馬はそう言って、自慢気にくっきりと刻まれた隈をなぞる。


「はぁ、相変わらずだな。で、終わったのか?」


「もちろん終わってねえ!だから、後で写させてくれ。ミナ!」


「早く来てる時点で、そんなことだろうと思った。何を貸せばいい?」


「数学の課題冊子と英語の冊子と化学のワークだ。途中式が答えにないからそれ写させてくれ。英語は英作問題のところ。他はやってるからすぐ終わると思う」


(それ、めっちゃ時間かかるじゃん)


 と思うが、それは口に出さずリュックに入っている課題を取り出し、ヒラヒラと見せつける。


「ジュース奢りな」


「そこは友達料金で無料ってことに」


「じゃあ、これは無しだな」


 馬鹿ぎふざけたことを言うので、俺がリュックにしまうフリをする。


「冗談だって!?貸してくれよ。ミナ。ちゃんと奢るからさ」


 それを見て、流石にふざけ過ぎたと分かったのか馬鹿は自分の立場を弁え、ジュースを奢る約束を結んだ。


「じゃあ、交渉成立ということで」


 手に持っていた課題達を有馬に渡したところで、信号が青になったので歩くスピードを上げる。


「ほら、モタモタしてないで行くぞ。課題今日中には終わらせるんだろ?」


「ちょっと待てよ!今リュックにしまってるから……おし、今行く!」


 課題を自分のリュックにしまった有馬は、駆け足で俺を追いかけ隣に並んだ。


「そういえば、ミナ?知ってるか?」


「何をだよ?」


「堺と星川がカップルになった話」

 

「いや、初耳だが」


 有馬の話は、前世の知識を得たため知っているが、誰からも教えてもらってないのに知っているのは不自然なので、あえて知らないフリをする。


「聞いた話だとクリスマスの日に、堺の奴が星川に告白して、付き合うことになったらしい」


「へぇ〜」


「反応薄いな!もっとあるだろ!こう、悔しいとか、妬ましいとか。」


「まぁ、あいつらが付き合うのは時間の問題だと思ってたし、そういうのはあんまり」


 口から出まかせを出しつつ、俺はポッケに突っ込んでいる手を思いっきり握りしめる。


「おっ、噂をすれば何とやら。話題のカップルが目の前にいるぞ」


 有馬がそう言って、視線を向けた先には幸せそうに手を繋ぎ談笑をしている堺と星川。そして、その遠く後ろをゆっくりと下を向きながら歩く水瀬がいた。















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