第4話 負けヒロインと連絡先交換
「奏君、もう時間になったから上がっていいよ」
水瀬との談笑に花を咲かせていると、あっという間に時間が過ぎ気づけば、マスターからバイトの終わりを告げられる時間になっていた。
「分かりました。水瀬、俺はもう帰るけどそっちはどうする?」
「私も帰るよ。ここの雰囲気が好きだからこのままだと閉店時間までずっと居そうだから」
「気に入ってもらえたようで何よりだ。マスターもそれを聞いたら喜ぶ」
「うん、絶対また来るよ。こうやって湊川君と話すの楽しかったから」
「シフトが決まってるわけじゃないから、次は会えるか分からないけどな」
「えっ…そうなの?」
水瀬は少し残念そうな顔になる水瀬を見て、俺は彼女の力になれたんだと思い少し嬉しくなった。
「まぁ、バイト俺ともう一人しかいないから大抵平日の夕方はいるよ」
「じゃあ、次は学校終わりに来ることにするね」
「俺も学校あるから、放課後になってすぐ来ても居ないからな」
そう言って俺はバックヤードに入り、財布から水瀬に出した商品の代金ちょうどを取り出して、マスターに俺が奢ることになってたんで、ときちんと伝えレジの中に入れておき、水瀬が帰ったのを見届ける。
「今日はありがとう。湊川君。おかげで少しだけ気持ちに整理がつきそうだよ」
「そりゃ良かった。気をつけて帰れよ」
「うん、またね」
そう言って、水瀬は小さく手を振り店を後にした。
俺はドアが完全に閉まったところで再びバックヤードに戻り、制服を脱いで鞄の中に入れていた服に着替え、ロッカーに入れていた緑色のフードが着いたコートを羽織り店長に挨拶をして裏口から店を出る。
店を出て鞄からスマホを取り出し、通知がないかを確認して、特に急ぎの内容はないのでズボンのポッケに突っ込み、コートのポッケに手を突っ込み歩き出す。
俺が店の裏手から出て入り口の方に出ると、何故か水瀬が店の前でスマホを弄っていた。
ここで声を掛ける選択肢を取るか迷ったが、ここで話しかけないのも少しおかしいと思ったので、声を掛けた。
「まだ、帰ってなかったのか水瀬?」
「あっ、湊川君。すぐ終わったんだね。まだ帰っていないのは湊川君の連絡先もらおうと思って。ここにまた来て、湊川君がいませんでしたで無駄足になるの嫌だから」
「あぁ、そういうこと。じゃあフルフルでいいか?」
「うん」
俺達はフルフルを起動して、スマホを軽く振るとお互いの連絡先が出てきた。
「湊川君ってLimeの名前湊川なんだ。これ親にややこしいとか言われなかったの?」
「特に何も言われなかったよ。普段あの人達俺に連絡する時、Limeでメッセージ送るんじゃなくて通話だから。こっちの名前なんて気にしてないんだよ」
「へぇ、そうなんだ。珍しいね」
「ただ、家の親が機械音痴なだけだ」
スマホを操作して、俺はよろしくとメッセージ送り、続いてスタンプを送った。
「何このスタンプ面白いね」
どうやら俺が送ったスタンプがおかしかったのか、ふふっと少し微笑む水瀬。
「これお気に入りなんだ。頭がおかしい感じが面白くて」
「確かに、これは面白いっていうか、初見だったら絶対クスッと来ちゃうよね」
「男子はこれ見たら馬鹿みたいに笑うけどな」
俺は追加で、頭のおかしい白猫のスタンプを送る。そして、水瀬はそれを見て今度は笑い声を上げた。
「あははっ、これヤバイね。しりとりっ言われてクールに凛って!そしてその後の周りの猫の反応も面白過ぎるよ。また来週〜ってこれ毎週してるの?」
「そんなの俺は知らんけど」
「これ今度買うよ私も。絶対」
「気に入り過ぎだろ」
と、俺が苦笑いを浮かべると水瀬からよろしくのメッセージとブサ可愛い猫のスタンプが送られてきた。
「何か水瀬って感じのスタンプだな」
「それどういう意味かな?湊川君」
「変わり種が好きな感じとか?」
「えぇ、どうして私そんな風に思われてるの?」
「だって、野外活動の時、隠し味って言ってカレーにハヤシのルー入れてたとことか、みんながカッコいいって言ってる人を可愛いって言ってたから、少し感性が独特だとは前から思ってた」
「えぇ、だってカレーにハヤシのルーは合うし、この間話してた人はなんていうかあどけない感じだったから仕方ないじゃん」
「いや、40歳の俳優にあどけなさを感じるのは水瀬くらいだと思うぞ」
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