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 クリスマスが近づく度に思い出すことがある。クリスマスの夜にだけ出会える、僕の弟のことだ。

 ある年のクリスマスの夕方過ぎのことだ。いつものように僕と、三つ年下の彼はお互いに持ち寄った本やゲームを広げて思い思いに遊んでいた。僕は彼と過ごす何気ない時間を他の誰と過ごすひと時よりもずうっと大切に思っていて、彼もまた同じ気持ちでいてくれることを信じていた。

 互いにひとりっ子だった僕たちはお互いの寂しさを埋めあうようにしながら寄り添いあい、心を許し合える誰よりも大切な友だちだったのだ。

 僕は彼と遊ぶ時、いつからか時計を見ることを意識的に遠ざけていた。十八時を過ぎれば、彼の父親が彼を迎えにきてしまう。

 ずうっと誰にもじゃまされることなく、とぎれることなくおしゃべりを続けていたいのに。僕たちがこうしてそれぞれの家で暮らす幼い子どもである限り、それは赦してもらえない。それならせめて、残りの時間のことくらいは忘れてしまったほうが思う存分に限られたこの時を楽しめるのだから。

 子どもなりの、精一杯の攻防戦だったのだと思う。


 その日もいつもとおなじように、母親が階段を上ってくる音が聞こえる──ああ、もうそんな時間なんだ。それでも僕は時計をみようとはしない、だって、なにかほかの用事かもしれないし。気持ちだけはせめてあらがっていたい、そう思うことを責められる相手はいるだろうか?

 あきらめと一匙ばかりの期待──ないまぜの感情を抱いたまま、僕は扉の開く音を聞く。

 明るく朗らかな母の声は、僕に残酷な事実を告げる──はずだった。耳に届いた声を前に、思わず僕は首を傾げる。

「ご飯の支度が出来たわよ、ふたりとも降りてきなさい。食事につく前にはちゃんと手を洗ってね」

 ぱちぱちとまばたきを繰り返す僕を前に、傍らからはとびっきりのいい子のお返事の「はあい」が返ってくる。困惑を隠せないこちらを後目に、僕よりもひとまわりちいさくて華奢な掌をぎゅうっとこちらのそれに絡めるようにしながら、『弟』は答える。

「どうしたの? 早くいこうよ」


 家族ぐるみのつきあいとなっていた彼の両親がもちかけた相談──クリスマスの夜にどうしても外すことの出来ない仕事が入ってしまい、帰宅が遅くなってしまうこと──それを受けて両親が出してくれた答えが、一晩だけ彼を預かることだった。

「いつも別れるのを悲しそうにしてるんだもの、きっと喜ぶわよ」そう得意げに答えて、恐縮してみせる彼の両親からもいたく感謝されたのだという。

 ──とは言え、問題は僕だけがこの家でそれらをまるっきり黙っていられたことなのだけれど。

「たまにはびっくりさせたくて」

「クリスマスの夜なんだから特別な魔法がかかったとでも思わせてあげたくて」

「ごめんね、ちょっとびっくりしてほしかっただけなんだ」

 口々に告げられる言葉に、しぼんだ風船のようにしなだれていた僕の気持ちは、たちまちにふうわりと舞い上がる。まったく、単純な話ではあると思うけれど。

「ひどいじゃない、僕だけ仲間外れにするだなんて」

 ぶつぶつと口先だけで抗議の言葉をつぶやきながら、カシューナッツとレーズンの入ったサラダをフォークで口元に運ぶ。

 かすかにほほえんでいることに気づかれないように、顔はあげないままに。


 クリスマスの夜の僕たち家族のすることはいつも決まっていた──母の作ってくれるごちそう──たいていはサラダにローストチキンになすとミートソースのグラタン、それにクリスマスケーキと決まっていた──を食べながらおしゃべりをして、みなが笑いあいながら他愛もないおしゃべりをするテレビ番組をぼうっと眺める。

 部屋にはぴかぴかの電球飾りのついたクリスマスツリーと母のお手製のリースが飾られていて、これももう見納めなんだとすこしさびしい気持ちになりながら、いよいよ本番を迎えたそれらをぼうっと眺める。

 後かたづけを手伝い、順番にお風呂に入る。

 そうこうするうちに眠りに就く時間がやってくるので、サンタさんによろしくねを伝えてから子ども部屋に向かう。リビングからは、父のコレクションのクリスマスソングばかりを集めたアナログレコードが奏でる音がうっすらと聞こえる。

 いつもどおりのこの光景に、今年は新たな色彩が宿る。今年の僕には『弟』がいるからだ。


 ベッドに入った僕たちは、眠ったふりをして部屋の灯りを消したまま、ひそひそ声でおしゃべりを続ける。このまま起きていられればきっとサンタのおじいさんに会える、ひとりでは無理でも、ふたりでならきっと大丈夫なはずだから。

 期待に胸を震わせながら瞼をこすっていても、あらがいきることなど到底出来るはずもない睡魔は否応なしに僕たちを襲う。こんなにがんばって起きているんだからそろそろ来てくれたっていいのに──ぶつぶつと理不尽な抗議の声をあげながら、僕たちはいつしか夜の闇に吸い込まれ、朝が訪れる。

 待ちに待ったクリスマスの翌日の朝、僕たちは目を覚ましてすぐに、歓喜の声をあげてベッドの上で飛び跳ねる。そこには、おそろいのきれいな包み紙にくるまれたふたりぶんのクリスマスプレゼントがちゃあんと届けられているから。

 パジャマから洋服に着替えた僕たちは、はやる気持ちを必死に抑えつけるようにしながら階段を降り、かわりばんこで顔を洗って食卓につく。

 ダイニングテーブルには、昨晩の残りのバゲットで作ったフレンチトーストに目玉焼きとベーコンにサラダの朝食が並ぶ。

 澄んだまあるい瞳をきらきらと輝かせる彼とともに、僕たちは並んで朝食をとる。

 サンタクロースにもらったとっておきのプレゼントで遊ぶそのうちに、あっというまにお昼になる。

 僕たちは朝と同じように並んで食事をとる。

 やがて、子ども部屋でスケッチブックを広げて遊んでいるそのうちに、彼の父が彼を迎えにやってくる。

 ひどく恐縮したようすでしきりに頭を下げてみせる彼を前に、満面の笑みで僕は答える。

「とってもすてきなクリスマスプレゼントをありがとう、だから気にしないで」

 それがクリスマスの夜、僕と『弟』が過ごしたひとときのこと。


 クリスマスの夜の出来事にはまだ続きがある。それ以来、恒例になったように、毎年のクリスマスを彼は僕の家で過ごすようになったのだ。

 いまにして思えば、彼の家庭になんらかの事情があったことは明らかだった。僕は子ども心の片隅で『それ』にうっすらと気づきながら、目をそらすことに必死だった──だって僕は彼が大好きで、誰よりも特別な友だちだと思っていたからだ。

 僕たちがそれぞれに小学校を卒業するころにはサンタクロースはやってこなくなったけれど、その後もしばらくは僕たちが一晩だけ『四人家族』になるクリスマスの夜は続いた。

 一年に一度だけ、あの日の彼は僕の『弟』になり、僕は彼の『お兄さん』だった。

 きっかけはなんだってよかった──その裏にあったものをわざわざ知る必要がないことくらい、痛いほどに僕は知っている。

 僕と僕たち家族は一晩だけともに過ごせる『弟』を心から愛していた、ただそれだけなのだから。

 

変わらないものはこの世の中にはありはしない。僕たち家族の思い出には、もうすこしだけ続きがある。

 そんな風にしてクリスマスの夜をともに過ごしてくれた『弟』こと、近くの家に住んでいた彼はやがて全寮制の学校に進学するために町を離れてしまい、少なくとも僕たちが子どもでいられる間は続いていくだろうとぼんやりと夢見ていたクリスマスの宴からは、ある年を境にぽつんと『弟』の影は消えてしまった。

 もう子どもなんかじゃないのに、情けない──いくら頭でそう思おうとしても、寂しさはそう簡単にはぬぐい去れない。

 数年ぶりのひとりっこに戻ってのクリスマスを前に、ぼんやりとした喪失感に明け暮れていた僕の元に届いたのは、よくよく身覚えのある筆跡で書かれた美しいグリーティングカードだった。

『兄さんへ メリークリスマス。今年からはいっしょに過ごせなくなってしまったけれど、何年ものあいだに渡ってあなたたち家族が僕にプレゼントしてくれたあたたかな夜の思い出を僕は一生忘れることはありません。あなたたちにたくさんの幸せが降り注ぎますように』

 大人になった『弟』が最初に僕にくれた、何よりも特別なプレゼントがそれだった。



 さて、時間をうんと早送りして、すこしだけいまの僕の話をしようと思う。

 いまの僕はと言えば、生まれ育ったあの町を離れ、いまのところはまだ自分だけの家族を持つこともなく、サンタクロースの使いの役目を果たすことがないまま日々を過ごしている。

 年老いた母親はいまでもかわいらしいクリスマスリースを作っていて、数年前から販売するようになったそれらはとても人気があるらしい。

 幼いころから空想が好きだった僕はこのように物書きのまねごとなどをするようになって、時にこうして、心の引き出しのうんと奥にしまいこんだ思い出を引っ張り出しては誰かの心に届くことを願って言葉にして書き連ねてなどいたりする。

 幼いころの親友もとい、一晩だけの『弟』はと言えば、遠く離れた町で緑の木々や花の世話をする仕事に就いて、日々を過ごしているそうだ。

 それぞれに暮らす僕たちは年に数度会えればいいほうだけれど、たぶんきっとそれで構わないのだとお互いにそう思っている。

 寄り添いあってともに生きることだけが家族のあり方の正解ではないことを、大人になることの出来た僕たちはちゃんと知っている。


 今年も彼はきっと、『弟』として僕にクリスマスカードを送ってくれるだろう。僕はそれに備えて、店頭に立ち並ぶ色とりどりのカードの束の中からとっておきの一枚を選ぶ。

 それが、毎年恒例の僕のささやかなクリスマスの準備だ。




「うん、すばらしいね」

 プリントアウトした原稿の束を手にしたまま告げられる言葉に、ほっと胸をなで下ろすような心地を味わう。この瞬間はいつだって怖い、きっと拒絶されることはないだろうと心のどこかで甘えていたって、それでも。

「まだこれから直しを入れるだろうから、完成稿ではないんだけれど……最初に読んでもらうのは君がよかったんだ、どうしても」

「本当によかったの?」

「信じて」

 子どもじみた懇願めいた言葉を、ふわりとやわらかな笑顔はたちまちに受け止めてくれる。

「僕なんかでよければいくらだって」

 ふわりと解き放たれる言葉には、目には見えなくとも何よりも確かな、信じたいとそう思わせてくれるだけの魔法がかけられている。

「不思議だよね、なんだか。いまさらだとは思うんだけれど」

 いとおしげに瞼を細めるようにしながら、うっとりと優しいくちぶりで彼は答える。

「誰だってみな、同じように子どもだった時代をそれぞれに過ごしていて――そんなことみな忘れたふりをして、澄ました顔でいて。それでも、みんなの胸のうちにはそれぞれにうれしかったこと、寂しかったこと、不安だったこと、忘れられないことがたくさんあって。大人になれたからこそ、そんな気持ちひとつひとつを持ち寄りあうことが出来て――」

 じいっとこちらを覗き込むようにしながら、あたたかな言葉が落とされる。

「いまこうして君に出会えたのが大人になってからでよかった。そうじゃないときっと、こんな風に話せなかった気がするから」

「……そうかな」

 力なく答えるこちらを前に、得意げなようすのきっぱりとした返答がかぶせられる。

「きっとそうだよ」

 やわらかな言葉の奥に滲む幾重にも重なり合った色に、僕は目を離すことなど出来ないままじっと見惚れてしまう。

「ねえ、ところでちょっと気になったんだけれど」

「いいけれど、なに?」

 すこし遠慮がちな目配せとともに告げられる言葉を前に思わず身構えていれば、やわらかに打ち消すような笑顔とともに優しい口ぶりでの問いかけが投げかけられる。

「ここに書いてあるのは、君のペンネームでいいんだよね?」

「ああ……」

 拍子ぬけしたような心地で、僕は思わずちいさく苦笑いを洩らす。プリントアウトした書面に署名してあるのは、紛うことなく作家としての僕の名前だ。

「うれしいよ。またこうしてあたらしく、すばらしい書き手に出会えた」

「そんなこと」

 ぎこちなく肩を竦めるこちらを前に、にっこりと満面の笑みを浮かべるようにしながら彼は答える。

「わからなかったんだ、僕から聞いてもいいのかって。だからすごくうれしい。こうして読ませてくれたこともだけれど、次のチャンスをもらえたことが」

「ありがとう」

 ぽつりと力なく答えながら、大切な宝物を手にしたように紙の束をそうっと握りしめてくれているなめらかな指先をぼうっと眺める。

 世の中が与えてくれた肩書きを離れて、誰でもないただのひとりの男に戻りたい―あまえとしか言えないそんな矮小な考えを、彼はただ黙ってそうっと受け入れてくれていたのだということをいまさらのように僕は思い知る。

「図書館で探してみて、何冊かは置いてくれていたよ」

「そんな風に言わないでいいよ」

「試し読みは大切だから」

「ずいぶん消極的だね、君らしいけれど」

 くすくすと遠慮がちに笑う声が、秋風にたおやかに溶かされていく。


この世にあまたいる作家に、もし同じ問いかけを投げかけてみたとする。

「あなたは人を殺めたこと、完全犯罪を企てたこと、探偵として難事件を解決したこと、特殊能力で人の心を自在に操ったこと、この世ではない不可思議な世界で大冒険の旅に出たことはありますか?」

 例外がない、とは言い切れなくとも、きっと多くの人間は「ノー」を突きつけるはずだ。

 物語を綴ることは、決して現実に起こった出来事をなぞることではない―想像の翼を思い思いに広げ、時に綿密な取材を重ねた上で、『ここではない世界』で起こりえたかもしれない可能性の扉を読者へと開くことだからだ。

 それならば、あたかも現実の自分の身に起こった出来事であるかのように、『あり得たかもしれない過去』の扉を開いてみせることは?

 物を書くということを生業としてからもう随分な時間を過ごしてきたはずなのに、僕はいまだに、そんなありふれた問いかけにすら、最善の答えを出せずじまいでいる。


『すばらしい原稿をありがとうございます』

 スピーカー越しに届けられるくぐもった声を前に、遠慮がちな問いかけを投げかける。

「あれでよかったの?」

『消極的な物言いはあまり感心できません、試しているように取られかねますから』

 わざとらしく気弱な口ぶりで尋ねてみれば、いかにもらしいとしか言えない皮肉をたっぷりまぶした言葉がかぶせられる。

『そもそも納得のいかないものは出さないでしょう?』

「まあそうだけれど」

 出さない、という選択肢を選ばなかったのは紛れもない自身だった。本来なら彼のためだけに生み出したかのような、ささやかなおとぎ話だ。それを不特定多数に触れる形で届けたいだなんて願望は、見ようによっては醜悪なものだと取られてもおかしくはない。

 思わず言葉を詰まらせるこちらを前に、核心を突くような言葉がそうっと落とされる。

『なにか心境の変化でもおありでしたか?』

「そうだね」

 きっぱりと答えれば、かすかにくぐもった笑い声が洩れ聞こえる。

「そんなにおかしかった?」

『そうはっきりおっしゃるのは珍しいので』

 でもよかった、ほんとうに。ささやき声にくるまれるようにして届けられる言葉に、幾重にも折り重なりあったかのようなやわらかないつくしみが静かに溶かされているのを肌で感じる。

「ねえ。ところでひとつ、聞いても構わない?」

『なんでしょうか?』

 ささやくようなやわらかさで届けられる問いかけを前に、ひどく遠慮がちな口ぶりで僕は尋ねる。

「人生の一部を自分の心の内から切り取って、あたかも物語かなにかのように不特定多数の誰かに語り聞かせることを君はどんな風に思う?」

 ふいうちのように投げかけた言葉にすぐさまかぶせられるのは、あきれまじりのため息まじりの返答だ。

『……なぜそれを僕に聞こうと思ったんですか』

「君ぐらいにしか聞けなかったから」

『先生は時折ひどく悪趣味ですね、存じ上げてはいますが』

 こほんと、わざとらしい苦笑いをこぼしたのち、スピーカー越しのくぐもった声は、期待を裏切ることのないたしかな答えをくれる。

『それらに救われる人間がいる限り、これからもなくなりはしないものではないかと思います』

「じゃあ質問を変えるね。もし、あたかも現実の自らの身に起こった出来事であるかのように語られた一場面が、自らのために生み出された『あってほしかった虚像』だったとしたら、それはおろかなことだと思う?」

 途端に、やわらかな静けさが一面に広がる。当然伝わるはずだ、ここまで口にすれば――ほんのひとときばかりの沈黙の後、静かな言葉がぽとりと落とされる。

『これはいつか誰かに聞いた話で、ただの受け売りに過ぎませんが――ほんとうにそうだな、と自分でもそう感じたことなので』

 息をのんで言葉を待つこちらを前に、ささやき声はやわらかに響く。

『たとえ現実に起こった出来事だって、語り部を通せばそれらすべては自然と姿形を変えていきます。人は主観抜きで物事を語ることは出来ない。どんな出来事を例にあげたとしても、結局のところは、真実だなんてものはいつだって人の心の中にしか存在し得ないものです。それなら、現実に起こった出来事と空想の出来事にどう違いがあると言えますか? 誰かを傷つけ、もてあそぶために利用されるのでなければ、それを責めることの出来る人間はどこにもいません』

「……ありがとう」

 かすかに震える声で告げれば、すぐさま、覆い被せるようにひどく冷静な口ぶりでの返答が投げかけられる。

『僕の言葉ではありません』

「それを持ち帰って選んだ時点で、もう既に君の言葉だよ」

『ありがたく受け取らせていただきます』

 鼓膜越しに心を震わせてくれる言葉を前に、僕はうっとりと瞼を閉じて、耳を澄ませる。



 ×月 ×日

 

クリスマスにまつわる短い読み物をと依頼を受け、子どものころの思い出話を書こうと記憶の引き出しを開けることにした。

 他愛もないありふれたことだと思っていたそれが、自らを守ってくれたたくさんの大人たちがもたらしてくれたかけがえのない贈り物であったことにいまさらのように気づく。

 それらをさも『あたりまえ』のことのように受け止めていた自身の傲慢さにも。


 すこしばかり悩んだ末に、過去にさかのぼってのひとつの可能性を記すことにした。

 どんなに責められたって構わない、それが、いまの僕に出来る最善の贈り物だとそう感じたからだ。

 彼に、そして、いまもあちこちにいるかもしれない彼のようなかつての子どもたちに届けばいいと思った。

 それが物語を綴り、まだ見ぬ誰かの元に届くことを願って送り出すことを生業に選んだ自身に出来るたったひとつの使命のように感じたからだ。


 僕はこんなあたりまえのことをいつの間にか忘れていたらしい。

 気づかせてくれた彼に、心から感謝している。



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