第3話幽閉王太子

 なぜこんな事になってしまったのだろうか?

 余は別に父上を殺そうとしたわけではない、少々能力の足らない父上には休んでいただいて、英邁な余がこの国を正しく導こうとしただけだ。

 正義を行おうとした余が、何故塔に幽閉されなければならない。

 あれほど余に忠誠を誓っていた、騎士や廷臣は何をしているのだ?

 さっさと余を助けて、この国に正義を行う手助けをするべきであろう!


「少しは反省したか、ハリー」


「父上!

 何故です、何故英邁な私が、このような場所に幽閉されなければいけないのです。

 私は、持って生まれた能力が劣り、満足に政務が取れない父上に代わって、この国を正しく導こうと思っただけです。

 いい加減父上も、ご自分の事を理解されてください。

 父上は生まれついて色々と欠けておられるのですぞ。

 何事をなされても、平民よりも劣っておられるのです」


「……それは、ハリー、お前の事だ。

 持って生まれた能力が色々と欠けていて、平民にも劣っているのはお前だ。

 それでも、余が授かった唯一人の子供であるから、愛しておる。

 だからこそ、愚かを承知で王太子の地位に付け、足らずを補うための聖女を正妃に迎えようとしたのだが、ここまで愚かであったとはな」


「やはり父上は愚かなのですね、自分の事が全く分かっておられないのですね。

 さあ、早く私を解放してください、私がこの国を正しく導きます。

 多くの貴族士族が、私の戴冠を待ちかねているのです。

 私が説得したからこそ、父上を弑逆してこの国を正しく治めようとしていた救国の貴族達も、父上を助命することに同意したのです」


「ここまで愚かであったとは、いや、確かに余も愚かであったな。

 少しでも早く政務に慣れるように、王太子領の統治を任せたのが間違いだった。

 聖女殿を摂政として、全ての政務を任せておけばよかったのだ」


「なにを申されるのですか、父上。

 ローザは偽聖女で、アラベラ嬢こそ本物の聖女でございます。

 私の目の前で、何度も奇跡を起こしてくれています」


「……大道芸人が全てを白状した、あれは大道芸人がアラベラに教えたチンケな芸で、子供にすら馬鹿にされるような簡単な仕掛けだ。

 だがお前は、そのような仕掛けも見破れぬのだな……」


「父上、何度申せばわかるのですか、父上は家臣に騙されているのです。

 このままでは救国の忠臣が父上を弑逆してしまいますぞ」


「よく聞け、ハリー、救国の忠臣ならば、余を殺さずに悪い家臣を殺すのだ。

 余を騙している家臣を殺すのではなく、余を狙った時点で、その者は忠臣ではなく反逆者でしかないのだ、よく覚えていなさい」


 ああ、父上はやはり愚かに生まれてしまっているのだ。

 余が王となってこの国を導かなければ、王族や貴族の誇りが失われてしまう。

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