第187話 私達の抵抗
「君に影響力がある事と認めている。ただ、君達はせいぜい6人程だ。そして、君達は俺の派閥に入る事でその影響力を発揮できる。そうでなければ所詮少数グループでしかない。楽しく過ごしたいなら長いものには巻かれておくべきじゃないか」
いつも以上に饒舌になった総長の顔は自信に満ちている。
悔しいけど間違いじゃない。強行的な手段に出れば強いのは向こう側だ。
あくまで周りが私を買っているのは可能性。もし今日の騒ぎでエルンさん達についたとしても総長側の敗北じゃない。勢力図が少し半々に近づくだけでしかない。
ここからは私はハッタリを決めていくしかない。そして総長から完全に私を諦めさせる。
「そうですね。私達は少ないです。だけどその分精鋭揃いですからご心配に及びませんよ」
周りを見渡すと皆と目があった。各々が頷いて、私に自信をくれる。
「君のいう通りだろうけど、本当に大丈夫かい?」
リオル総長の手が私の肩に置かれた。力は入ってないけど、この手が最後の警告に思えた。
それと同時に後ろで誰かが動いた気配がして地面を蹴る音がした。
後ろを振り向くとヤンが前に出ようとしているのをアルが腕で静止させている。その視線の先にはリオル総長と近衛騎士のアステリオさんがいる。
正面にいるアステリオさんの鋭い眼光が私の後ろにいる二人に向けられていた。
「フランソワ様! 私もいます! シャバーニ様も!」
横から聞こえた声は聞き慣れた優しい声、そして私の憧れの人の名前だった。
声のした方を向くとアリスとシャバーニが微笑みながら静かに首を縦に振った。
アリスには今日の事を話していたけどシャバーニには今日アリスが話をして協力してもらえないかを聞く事になっていた。
今の言葉と二人の表情を見るにうまく協力してくれたらしい。
「やっぱり君は中心になる人物なんだ。だからこそ欲しいじゃないか」
一層鋭い目を向けてくるリオル総長。
アリスの声に私達の周りに居た人達の目が少しずつ私達へと向けられてくる。
「ほら、あの子達を合わせても10人にも満たないよ。それに周りの友達を助ける事も考えてみなよ」
完全に勝った気でいる目の前相手に思わずカチンと来てしまう。
「君の近衛騎士の事もあるだろ。アステリオの下なら君の近衛騎士も過ごしやすいじゃないか」
私にだけ聞こえてくるように小声で囁く。
なりふり構わずに権力に訴えてくる姿は私からしたら馬鹿らしい。
だけど、反面これは脅しでもある。誘いを受けないなら冷遇する。それも私をじゃない。私の周りをだ。
嫌らしい手だけど1番効果的だとは私も思う。
「自分もよろしいでしょうか!」
私達に向けられて声が飛んでくる。
その声は聞き覚えのある、年相応には見えない彼の声。そんな彼の声が近くの木の裏から聞こえて来た。
「誰かな君は?」
「マルズと申します。自分もフランソワ様達を、先輩方を尊敬していますので」
「話の意味を分かって言ってるのか君は?」
「はい。フランソワ様を見つけ、話がしたかったので声をかけようとしましたらタイミングを逃してここにおりましたので。話は聞こえておりました。自分も、フランソワ様達の派閥へ加えて頂きたいです」
「もちろんよ!」
マルズ君を断る要因なんて一つもない。
「お前は見所あるじゃねーか。見事、勝ち馬に乗ったぜ」
そんなマルズ君にヤンが声をかけていた。台詞がなんだか悪役っぽい気もするけど、気にしないでおく。
そんなやりとりを横目にリオル総長は不敵な笑みを浮かべたままだった。
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