第185話 私の宣言
「なるほど。そちらはそちらで大変でしたね」
学院であった事を私は自分の近衛騎士達に話した。
それぞれが話の腰を折る事もなく黙ったまま聴いてくれた。
私が話を終わると一番に声をかけてくれたのはユリだった。ヤンとアルは何も言わずに何かを考え込んでいる。
ユリの言葉は何気ない一言だけど私には心地よく聞こえた。
「ありがとう」
共感してくれた事に感謝の言葉しかない。それ以上の事を私は口にできなかった。
「それでどうするんだお嬢。俺たちにも言ったって事は、そっちだけで済む解決策じゃないんだろ?」
さっきまでの口調とは変わってヤンの真剣な問いかけ。このメリハリのつけ具合は流石としか言いようがない。
「そう。私はみんなと……」
「やぁ、こんにちは」
私の答えを遮ってこの場に現れた人物は総長だった。
しかも今日は一人じゃない。傍にはアーネスさんが。更に学院の生徒では無さそうな人物がいた。
「見つけたから声を掛けてみようかなと思って。紹介するよ。この人はフランソワさんだ。最近学院の中での話題の中心人物だ」
「初めまして。私はアステリオと申します。ここにいるリオル様の近衛騎士を務めさせて頂いております」
差し出された手はフランソワより大きく、見ただけで硬いと分かる。
総長の身長は高いが、それと同じくらいの背丈で、落ち着いた顔つきはアル以上に大人びて見える。
「初めまして。フランソワです。以後お見知り置きを」
握手を交わしてあいさつをする。
この場に現れた総長は偶然のように言っているが多分違う、狙ってきている。
むしろ恐らくこの日に来るだろうと言う事は私を初め、アンも予測がついていた。それを学院側の人物の方では共有済みだ。
『学院側の人間だけで説得が出来ないなら、騎士学校側の人間も使ってくるだろう』と。
「アステリオ総長の仕える方が学院の総長様だったんですね。流石です」
アルが申し出た。
そう、総長の近衛騎士は騎士学校の総長だった。
だからこそこの場に現れると私達は踏んでいた。
「君の仕える方がこの方なのか。やはり君は優秀だ」
「アルは知り合いなの?」
「えぇ、自分も生徒会には参加させて頂いておりますので、先程言っていた交換勉強会もその一環になりますので」
そこまでは読めていなかった。アルが優秀なのは知っていた、だけど、生徒会にまで携わっていると言うのは初めて聞いた。
「申し訳ない、交換勉強会の事でフランソワ様にはご心配をお掛けするかと思われますが、何卒ご協力下さい」
申し訳なさそうに頭を下げるアステリオさん。
この人に悪気は無いかもしれない。だけど、この人の立場的に言えば、居るだけでも一種の圧力になる。それを分かってきているのか、それとも分かっていないのか。真意を計り知れない。
「いえ、アルなら心配ありません。自信を持って送り出せますので」
アステリオさんの真意はまだ読めないけど私のやる事は一つだ。それは変わらない。
「ここにいる騎士学校の方々が噂の君の近衛騎士達かな。学院で総長を務めさせて貰っているリオルと言うよ。よろしくね」
「総長ちょうど良かったです。私から総長にお伝えしようと思っていた事がありまして」
「本当かい? それは楽しみだ。それでどう言った事かな?」
少し得意げに答えを待つ総長。その横でじっと佇んでいるアーネスさん。
そんな二人を見据えて私は宣言する。
「自分の派閥を作る事に致しました」
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