悪役令嬢になりましたので、自分好みの近衛騎士団を作ることにしました

第166話 私の誓い

「すみません、大変申し上げにくいのですが……総長様が何が勘違いされているようです」

「えっ？」

　虚をつかれたと言わんばかりの間の抜けた声の主からはさっき迄の怒りに満ちた雰囲気は抜けていた。

「私が先輩方に向かって少し汚い言葉を言ってしまいまして、それに対して指導頂いておりましたの。すみません、先輩方には嫌な思いをさせてしまいまして」

「本当かな？　君は言わされているだけなんじゃないの？」

　相手は意外と引き下がらない。

「本当ですよ」

「それだったら、どんな言葉を使ったのか気になるね」

「もう一度言えだなんて総長様は酷いです。私に過ちをもう一度起こせと？」

　言葉での返答はない。

　反応は目を細めて私を吟味するような視線。

「分かった。すまなかったね君たち。ついこの子を虐めているのかと勘違いしてしまった」

　そう言って先輩達へ頭を下げた。それも腰から上半身を綺麗に下げての謝罪。綺麗にも程がある。

「お手数をおかけでしてしまいまして。このような事は2度とないように気をつけます」

　笑顔全開で先輩達へ言葉を送る。先輩達も流石に私の意図を汲んでいるようで引き攣った笑顔でこちらを見ている。

「そ、そうね。2度とないようにしないといけませんわね。さようなら」

　一言言い残して逃げるように3人はこの場を離れていった。

「総長様もありがとうございました。かっこよかったですよ」

「恥ずかしい所を見せてしまったね。すまない、お昼を邪魔してしまって。それじゃあ、また」

　総長はそれだけ言い残して、校舎の方へと戻っていった。

　元のメンバーだけの空間に戻った。まるで嵐でも来たかのような時間だ。

「フランソワ様大丈夫でしたか？」

「大丈夫よ。なんてことないわ」

「それにしてもあんな人達は庇わなくても良かったのではありませんか？」

　ごもっともな意見だと思う。アンが口を膨らませて怒っている。ただ、元が可愛いタイプのアンがその怒り方をするとどこか可愛らしく思えてしまう。

「これでいいのよ。懲りたら無闇に突っかかってこないでしょうしね。先まで考えての事よ。恩を売っておけば絡んでこないわよ」

「それでもフランソワ様はお優しいですわ。私なら総長共々あの人達を責め立ててますのに」

「余裕を持たないと、別にあんなのが何を言ってこようが知ったこっちゃないわ」

　アンはその後も中々納得してくれなかったけど、最後にはユリィとアリスに諭されて渋々と言った様子ではあったけど納得してくれていた。

　それにしても、もう私の知ってるゲームの世界とは違ってきたなとしみじみ思う。

　ヤンやアルを近衛騎士にした事、そして続けてユリを近衛騎士にした。その事で本来関わらなかった人達との接点が出てきた。

　そして再認識する。ここは現実なんだと。私の知っているゲームじゃない。人はそれぞれの考えがあって、世界はこの学院以外にも広がっていると。

「フランソワ様どうされましたか？」

　私が呆けていることに気づいたアリスの言葉で意識が外に向いた。

「ううん、なんでもない」

　これからどうなるかは分からない。だから、私は私のできることをして、私の夢を叶えよう。そして、ここにいる友達達と楽しく過ごそう。そう改めて自分の中で自分に誓った。