悪役令嬢になりましたので、自分好みの近衛騎士団を作ることにしました

第164話 面倒くさい先輩

「あら、こんな所でお昼を食べているなんて陰気くさいわね。やだやだ」

　悪意の塊の言葉の矛先は間違いなく私たちに向けてだった。

　この場にいるのは私たちとその言葉を言い放った集団しかいないのだから。

　見たことのない顔の人間からなんでそんな事を言われたのか理解に苦しむ。

「それ私たちのことですか？　いきなり何なんですか？」

「貴方達以外いないじゃない。当たり前のことを言わないでよ」

「ならそんな所へわざわざきて嫌味を言いにくる貴方達も辛気臭いのでは？」

「上級生に向かって何よその態度。嫌だわ、調子に乗ってるのかしら」

　怒りを通り越して呆れてため息が出てくる。

　この人たちがいきなり出てきて、何を言い出すのかと思えば、ただのいびりに来たらしい。

「なんでもいいんですけど、先輩方はどなた様ですか？　お会いしてこととかありましたっけ？」

　私の質問に目がつり上がった。

　どうやら癇に障ったらしい。つまりこの人と会った事があるらしい。

　もしかしてフランソワ自体が知り合いだったのか。だとしたらそれはそれで厄介だ。

「ごめん、誰かの知り合いだったりする？」

　アリス達は揃えて首を横に振った。

　となると可能性はフランソワだけか。

「えーと。それでどなたでしたっけ？」

「別にそんな事どうでもいいのよ！」

　キレた。恐らく私に覚えられていなかったのがかなり効いているらしい。

　相手は3人、そのうちの1人がキレているのを周りの2人が宥めている。

「だったら結局何なんですか？」

「貴方達みたいな下級生がのうのうとしているのが気に食わないのよ！」

　無茶苦茶な理屈を並べらて私はため息を吐くことすらやめてしまった。

　あれだ。この人には何を言っても無駄だと悟ってしまった。

「こんな辛気臭いとこで集まって、ちょっと貴方が近衛騎士を見つけたからと噂になって、本当に運がいいだけよね」

　嫉妬してることは分かった。つまり、この人は僻みに来たわけだ。

　そこでふとある光景が思い出された。少し前の記憶、風景の中でこの人を見た気がする。喉元まで出かかっているが最後の最後で出てこない。

「あっ！　思い出した！　前の交流会でアルの所にいた人！」

　そうだ前にアルを取り囲んでいたうちの1人だ。かなり前の方にいたから顔を合わせていたんだ。

「そ、それがどうしたのよ！」

　正解だったらしい。

　僻みに来た理由はアルの事かとここで理解できた。

　ただだからと言って悪意に満ち溢れた嫌味を肯定は出来ない。

「そうですね。どうでもいい事でした。ただ、貴方にとやかく言われる筋合いはないですよね。迷惑かけてるわけでもないですし」

「何？　私たちに反論するの？」

「そりゃしますよ。むしろ私の立場でしない人いないですよ」

　私の言葉に意外な反応を示した。

　その言葉を待ってましたと言わんばかりのにやけ顔。

「嫌だわ、私たちに反論だなんて。誰にものを言っているのか分かってるのかしら」

「名前は存じませんが目の前の貴方ですよ」

「私に言うと言うことはリオル総長に言っているのと同じですわよ」

　聞いたことない名前。ただ、肩書き的には多分どこかの代表か何かをしてる人なんだろうと言うのは分かった。

「えーと、そのよく分からないんですけど、それはどう言うことで？」

　私の心の底からの返答に今度は相手の方がため息をつく事も馬鹿らしいと言うような表情で呆れ返っていた。