第154話 結成! 白銀の騎士団

 掛け声が終わるのと同時にそれぞれの指先がリーダーに相応しいと思う人物に向いていた。

 アルに2票、ユリに1票。アルに入れたのはヤンとユリだ。ユリに入れたのはアルだ。

 想像の通りの結果だった。さっきのやりとりを見てこうならない事がおかしい。


「と言う事でリーダーはアルに決定ね! おめでとう!」

「当然だな。お前以外ありえないだろ」

「おめでとうございます、アル先輩」


 それぞれが祝いの言葉を投げる。当の本人は何かを諦めたかの様に肩を落としている。


「分かりました。でも向いてないと思ったら変えてくださいねフランソワ様」

「私も正直貴方が1番向いてるとは思うわ。ヤンはまとめ役向いてなさそうだし、ユリは気を使うだろうしね。何より貴方の判断力を信頼してるわ」

「そうだな、俺はどっちかっていうと勝手に動くタイプだからな。って本当の事とは言え酷い言い草だなお嬢」

「お気遣いありがとうございますフランソワ様」

「って事で改めて今週末の任務任せてくれよリーダー」

「君、面白がってるだろ」


 アルの冷めた目に晒されながらもヤンはニコニコしている。本当に状況を楽しんでいる様にしか見えない。

 アルが咳払いで一拍置いた。


「今週末のフランソワ様の護衛をヤンとユリさんに任せる。護衛方法は2人に任せる。初護衛だからね。気合を入れてくれ」

「おう」

「はい」


 リーダーの号令に何故か私は感動していた。なんというかカッコいい。


「やっぱり恥ずかしいですね。もう少し緩くしてみますねフランソワ様」

「そう? 私は好きよ。でもアルのやり方に任せるわ」

「そう言ってもらえると助かります」


 アルの号令を聞いて私は1つ、思いついた。いや、いずれはするつもりだった事だ。この場でそれをするのは、思わぬ場面でテンションが上がった事での思いつきかも知れない。それでも、ここでそれを宣言したくなった。


「せっかくだしこの場で近衛騎士団に名前をつけることにするわ。名前は『白銀の騎士団』。いいでしょ」

「おいおいお嬢。名前をつけるのはいいけどなんだよ白銀って。白銀要素どこにもねぇだろ」

「今はね。いつか鎧とか着た時のこと考えて見てよ。綺麗で良いじゃない」

「今時がっちりと鎧着てる近衛騎士なんか殆どいないだろ……」

「えっ! そうなの?」


 言われてみればガルド公の近衛騎士だったカルロスさんも割とラフな格好だった気がする。


「そうですね。鎧なんかを着込むのはそれこそ戦の時などでしょうか」

「アルの言う通りだ。普段から着てたら重いだけでしんどいしな」

「ま、まぁ良いじゃない! 私はそう思ってたんだから」

「なんかお嬢ってちょっと世間からずれてる時あるよな」

「まぁ、それがフランソワ様の良いところでもあるので」

「それフォローになってないぞ」


 ユリの苦し紛れのフォローにツッコミをいれるヤン。こう見てみるとなんだかんだでいい組み合わせな気はしてくる。


「それで……いいかな。騎士団の名前?」

「僕は構いませんよ」

「俺もだ。好きにしたら良いさ」

「私も問題ありません」


 三者三様の答えだけど否定の答えは出なかったことに胸を撫で下ろす。


「それじゃあ、改めて。『白銀の騎士団』結成よ」


 後はここに1人、私の狙いの人物を入団させる。そのために今週末まで待ちきれないワクワクが私の心の中を支配していた。

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