悪役令嬢になりましたので、自分好みの近衛騎士団を作ることにしました

第55話 行動開始！

　短刀を受け取ってそれから少し経っても私は眠ることはできなかった。まるで子どもの頃の遠足の前の日のような感じだ。

　日は完全に落ちて周りの家の明かりも消え始めたころにアルは起きて部屋から出てきた。お互いにあいさつを交わして黙々と準備に入った。傘はさせないからローブを服の上に来て、私は短刀を懐に下げて準備完了だ。

「それではそろそろ向かいます」

「あぁ、よろしく頼むよ」

　家の主にお礼の頭を下げて私とアルは素早く外に出た。

　家の窓から見た限り夕方私たちを追いかけてきたやつらどころか、人も誰もいなかったのを確認していたから、素早く外を駆け抜けていく。

　目的の場所はキース達のアジトの左方方面だ。

　正面からフロスト達が仕掛けると考えた時に、右方は行き止まり、裏には川がある。だからヤンが１人で攻め込むなら左方からだと考えたからだ。

　場所はあらかじめある程度アルに聞いていた。だから外に出てからは余計な事を話さずに後ろをついていった。

「見てください」

　聞いていた場所の近くになった時にアルは足を止めて私に入り組む通路の向こうを指さした。

　そっちを見ると数人組が身を隠すように建物の陰に入りながら私たちと同じ進行方向に向かって行くのが見えた。

「見覚えのある顔がありました。フロストの人員です。キース達の所までそう距離はありませんのでそろそろ始まるかもしれません。急ぎましょう」

　私には見覚えはなかったけど、アルが言うなら間違いないのだろう。

　いよいよ本番が近づいてきたのかと思うと走る足に力が入った。