第23話 アリスとの散策 中編

街に関しては当然アリスの方が私の何倍も詳しかった。この町が高層、中層、低層の3つからできているという事。市場は中層を基本にして広がっている事。お勧めの洋服屋や美味しい料理を食べることのできるお店だったり街についての色んなことを教えてもらった。


「これ似合う? 私帽子とかあんまり被らないから分からないのよ」


 アリスお勧めの洋服屋で私は帽子にチャレンジしていた。確かに品物はどれも明るくて、アリスのイメージにぴったりの服が並んでいる。


「どれもお似合いですよ」

「そう言ってくれるのはありがたいけど、それって一番難しい答えよアリス」

「そんなつもりはなかったんです。ただ本当に似合うなって思ってしまって」

「そしたらアリスが一番いいと思うのを選んで頂戴。それならどれでも心の底から納得できるから」

「そ、そんな大役を私が……」

「そこまで気を負わなくても大丈夫よ」


 アリスが帽子とにらめっこをしている。表情は真剣で、目線は一心不乱に並べられている帽子に向かっている。

 アリスの手が動いた。伸ばした先にあったのは頭に乗せるような紫のベレー帽。それを手に取り私の頭の上にかぶせた。


「うん。やっぱりこれです。フランソワ様はやっぱり紫が似合いますね」

「もしかしてそれって毒婦のイメージって事?」

「いえ、クールで艶やかなイメージです」


 私のボケには全く何も言わずにアリスが即答した。

 正直アリスの中での私が少し気になるわ……。それでもアリスが選んでくれた帽子なんだから素敵に決まっている。私は早速店員に声をかけて、その帽子を購入した。


「今は被らないんですか?」

「今日は大人しめな服だからね。学院に行くときにつけて行こうと思うの」

「なるほど流石です」

 そんな他愛ない話を店から出ながらしていた。

 店を出てあたりを見ると、食事のできる店や、食べ歩きのできる名物を売っている店の前には人だかりができ始めている。


「もうこんな時間! アリスと街を見ているのが楽しくて時間を忘れてたわ。そろそろお昼にしないとアリスがご飯を食べられないまま馬車に乗ってしまうわ」

「本当ですね。私も気づきませんでした。それでは私が好きなお店になりますが行きましょう。このあたりですのですぐにつきますよ」


 そう言ったアリスの後をついていくと表通りに面した中でもひっそりとあるレンガ造りのお店を彼女は指差した。

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