第8話 幕間 シャバーニと言う男
仕事から帰ってきて一息ついてパソコンに対面した。画面に映るのは毎日見ている乙女ゲーム『白銀の騎士』のコミュニティサイトのトップページだ。
各キャラの2次創作からイラスト、推しキャラの集いまでなんでもござれのファンサイト。運営してる管理人には足を向けて寝られない。そしてここに来ることが私の毎日の楽しみであり、癒しの時間だった。
「今日もない。マイナーキャラ推しはつらいわぁ」
眺めているのは私が拙いながらにも書いた二次創作小説のページ。感想の欄は昨日と変わらず空白。ただ自分の書いた文字だけが映し出されている。
イラスト板も覗いてみるが、全くない。私の推しキャラの絵がない。あるのはメインヒーロー4人のイラストとアリス、悪役フランソワとそのお抱え騎士ペルシャばかり。同じサブキャラでもフランソワの取り巻きでもイラストあるのになぁ。
私、山田幸の推しはシャバーニ=ナンジだ。ヒーロー達の引き立て役であり、悪い人間ではなく、純粋にいい人、弱き者を助ける騎士の鏡。
それでも人気がないのは見た目のせいか、それとも出番のせいか。謎でしかない。
顔は堀の深い少し大人っぽい顔をした騎士学生。体は大きく、腕の筋肉はすさまじい。服を着ていても分かる体中の筋肉には『漢』という文字が似合うナイスガイ。似たようなキャラはメインヒーローにもいるが、あっちにはイラストがあるのにこっちにはない。不公平極まりない。
そもそもサイト内で名前を呼ばれることすらない。ファンの間では『ゴリ騎士』『ゴリラ』としか呼ばれない不幸なキャラだ。
まぁ、ゴリラと言われたら否定しにくいのも悲しい事実ではあるが……。
そんな不人気キャラ街道を突っ走るシャバーニが私の推しだった。あの筋肉に触れるなら触ってみたい。それが私の叶わない夢の一つだった。
「顔が濃いとか皆言うけど、それも立派な一つのイケメン要素だって事を皆気づいてや」
私もイケメンは好きだ。メインヒーロー4人も王道で好き。なんなら全員を近衛騎士にするルートとか作って欲しかったわ。
ヤンのような釣り目のイケメンも好き。
アルのような真面目君のイケメンも好き。
オーランのようなやさぐれたイケメンも好き。
ユリ嬢のような男装イケメンも好き。
それでも私はゴリラと呼ばれるシャバーニが一番の推しなのは変わらない。
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