当てる
藤村 「先生に会ってさ」
吉川 「先生? なんの?」
藤村 「なんのって。先生は先生だけど。みんな先生って呼んでるし」
吉川 「なんかきな臭いな」
藤村 「違う。そういうのじゃない。先生はすごいんだよ。全部わかるの。俺のこと全部わかる」
吉川 「どんどんヤバい気配が増してる」
藤村 「違う違う。本当にお前が思ってるようなのじゃない。俺も最初はインチキ臭いって思ってたの。でもそういうのじゃないから。全部当てたんだよ、わかる? 名前も言ってないのに」
吉川 「もうビコンビコン警戒音が鳴ってる。それで?」
藤村 「名前から家族構成から血液型から。子供の頃の記憶も。ほら、俺ってあれじゃない? 小学校で通知表に落ち着きがないって書かれてたじゃない? あれも」
吉川 「それはわかるだろ。今の人となりを見たら小学校の頃に落ち着きがないって書かれてたなってのはだいたいわかるんだよ」
藤村 「それだけじゃないから。俺の前世も当てたの」
吉川 「当てたって、お前はその正解知らないだろ」
藤村 「織田信長の懐刀と言われた池田恒興」
吉川 「聞いたことある。それがお前の前世?」
藤村 「の懐刀と呼ばれた小諸元八」
吉川 「知らない。聞いたことない」
藤村 「の懐刀とされた松次」
吉川 「もう名字すらない。何も残してない人だろ、それ」
藤村 「主君を守るためにすごいデカい犬と戦っていいところまでいったらしい」
吉川 「勝ってないんだ。犬とマッチメイクして」
藤村 「あと俺ですら知らない情報もピタッと当てたし」
吉川 「だからそれはなんで当たったって判断するんだよ」
藤村 「先週マッチングアプリで会った子。もうちょっと押せばイケたらしい」
吉川 「それを言われて当たったって思ったの? イケたなぁ。って?」
藤村 「俺も密かにそうじゃないかと思ってたから」
吉川 「じゃあやってみろよ。聞いてみればいいじゃん」
藤村 「もうブロックされてるから」
吉川 「それはイケてないだろ。何の根拠でイケると思ってるんだ」
藤村 「違うんだって。俺が選ぶトランプだってまだ選ぶ前からわかってたんだよ?」
吉川 「それはもう手品だろ。なんでそこで信頼感増しちゃってるんだ。トランプ出された時点で種も仕掛けもあるんだよ」
藤村 「信じないんだったらそれでもいいよ。でも俺に英雄の相が出てるってのは事実なわけだろ?」
吉川 「なんで? 犬と引き分けた前世の人が?」
藤村 「デカい犬だからな? 言っておくけど。まじでめちゃくちゃデカかったから」
吉川 「知らないだろ、自分でも」
藤村 「前世の記憶みたいなもん? 言われた瞬間にデカさがフラッシュバックしたもん。お前が想像してるのの1.2倍くらいデカいから」
吉川 「俺の想像をなんでそんな的確に当ててるんだよ」
藤村 「それも先生が言ってた。その人が想像してるのの1.2倍くらいデカいって」
吉川 「先生もっと予言することあるだろ。俺の犬に対する思い、そんなに重要か?」
藤村 「あと先生がコンビニで期間限定で出たアイスめっちゃ美味いって言ってて。確かに食べたらそれも当たってた」
吉川 「インフルエンサーみたいなこと言ってるな。それは能力じゃなくてただのオススメだろ」
藤村 「これ言ったら絶対にビビると思うけど、米津玄師が売れる前から絶対来るってわかってたらしい」
吉川 「いるだろ、そのくらいの予測立ててた人は。割と多くいるよ」
藤村 「で、次に俺が来るって」
吉川 「どこにだよ! お前別にミュージシャンでもなんでもないだろ」
藤村 「色々な意味で来るって言ってた」
吉川 「曖昧! すげえ予言が雑だし、それを信じるお前の雑!」
藤村 「実際に来かけてるのは俺も感じてたから。これも当たるの確定だろ」
吉川 「来かけてるなぁって思ってたの? 自分で? どこに何が?」
藤村 「お前がそうやってツッコむのも実は全部当ててる。俺は確認してるだけ」
吉川 「試されてたの? だったらこの先どうなるか先生は言ってるんだろ? どうなるんだよ!」
藤村 「闇が訪れる」
暗転
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