アイス

藤村 「アイス食べたいなぁ」


吉川 「確かに。今ちょうどアイス食べたい」


藤村 「何アイスがいい? やっぱり旬のものがいいよな」


吉川 「アイスに旬求める? もうアイスになった時点で旬は夏だろ」


藤村 「だってしいたけの旬は春先か冬前くらいだけど、しいたけのアイスを今食べたいと思うか?」


吉川 「その前にしいたけのアイスってなんだよ? ないだろ、そんなの」


藤村 「まだ旬じゃないからな」


吉川 「旬になってもないだろ。季節のものとしても冬前にしいたけのアイスを食べたくなるか?」


藤村 「あ、しいたけ嫌いなんだっけ?」


吉川 「好き嫌いの問題じゃないよ! アイスにして食べたいかどうかの話だろ。しいたけはアイスとしては食べたくないよ」


藤村 「え、知らないの? しいたけってビタミンDがすごいんだよ?」


吉川 「だから何なんだよ!? 栄養素で舵を取れる話じゃないだろ。どんだけビタミンDがすごくてもアイスでは食べたくないだろ」


藤村 「しいたけはビタミンDがすごすぎてもう実質ビタミンJくらいまでいってるって話だよ」


吉川 「ビタミンってそういうものじゃないだろ! 量でランク付けされてるやつじゃないんだから。実質はずっとビタミンDだよ」


藤村 「あのさ、あれだよ? しいたけのアイスって言ってもしいたけを凍らせたものじゃなくて、しいたけフレーバーのアイスって意味だよ?」


吉川 「そうだと思ってるよ。だからってどっちも食べたくないよ。凍ったしいたけガジガジ食べるの遭難者くらいだろ」


藤村 「え、遭難者って凍ったしいたけ食べるの?」


吉川 「知らないよ! 勢いで言っただけだよ。なんでしいたけのアイスみたいなのを真顔で語るのに人のディティールをほじくってくるんだよ!」


藤村 「だから別に俺はしいたけの話をしたいわけじゃなくて旬の話をしたいんだよ」


吉川 「アイスのフレーバーに関しては旬とかないだろ、そりゃ清涼感のある夏っぽいものが多めに出るだろうけどさ」


藤村 「でも夏場に牛すじ煮込みのアイス食べたくなる?」


吉川 「ならないよ! 冬場でもならないよ! なんでわざわざ気持ち悪めのフレーバーを提案してくるんだよ。それはもう旬の話じゃなくなるだろ」


藤村 「牛すじ煮込み嫌いなの?」


吉川 「おい、話が平行線だな! 好き嫌いじゃなくてよ。アイスとして変だって言ってるの。なんでわざわざアイスにするの? 牛すじ煮込みは牛すじ煮込みとして完成してるだろ」


藤村 「たこ焼き味のうまい棒もあるけど」


吉川 「スッて丁度いい反撃をするなよ。よくその速度で返してきたな。用意してたの? スナック系はまだギリギリありだろ。アイスはスナックよりも味の許容範囲が狭いの! アイスはそもそもアイスを食べたいんだよ」


藤村 「それはわかるな。意外と元となった味とアイスの味って違うから食べたところで欲求は満たされなかったりして」


吉川 「だろ? そのフレーバーの要素はわかるんだけど、あくまで要素に過ぎないから。アイスはアイスとしての美味しさなんだから」


藤村 「前に生のポッピングシャワー食べた時もアイスよりも爽やかじゃなかったし」


吉川 「なに、生のポッピングシャワーって!? ポッピングシャワーってサーティワンのフレーバーだろ? 生のはねえよ! アイスになった時点で初めてポッピングシャワーが生まれてんだよ」


藤村 「そう? じゃしいたけって?」


吉川 「しいたけはしいたけとしてあるよ! むしろアイスがないだろ!」


藤村 「あぁ、そういうのもあるんだ」


吉川 「そういうのもっていうか、そういうものが主体だよ。アイス先行で世界ができたわけじゃないんだから」


藤村 「え、じゃあラブポーションサーティワンの生のやつはあるの?」


吉川 「それは多分、あったとしたらイリーガルな薬物だよ!」



暗転

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