構文
藤村 「おっしゃることはわかりますが、状況が状況ですから」
吉川 「そうか。確かにな。今は静観するしかないか」
藤村 「状況が状況なので」
吉川 「結局全部あそこがボトルネックになってるんだよな。これは人員の問題じゃないよ。どうにか解決しないと」
藤村 「ただ問題が問題ですから」
吉川 「そうなんだよなぁ。スパッと解決できるようなら初めから困ってないんだよ。景気も少子化もこっちがどうにかできるようなことじゃないし」
藤村 「問題が問題ですからねぇ」
吉川 「そう言えば新しいプロジェクトの方があるだろ、あっちの進捗はどうなってるんだ?」
藤村 「それなんですが、進捗が進捗なんで」
吉川 「……うん? で?」
藤村 「進捗が進捗なんで」
吉川 「だからそれを聞いてるんだよ。進捗はどうなんだ?」
藤村 「進捗なんで」
吉川 「なんなんだよ! 答えを聞いてるんだよ!」
藤村 「状況が状況なので」
吉川 「状況が状況なのはわかってるよ! 進捗は……。お前、まさか全ての答えがその構文で乗り切れると思ってる?」
藤村 「無理ですか?」
吉川 「無理だろ! 進捗が進捗なんでって言われても、全然なんのことかわからないもん」
藤村 「進捗は無理ですか。状況はイケるんですよね?」
吉川 「イケるとかイケないとかじゃないだろ!」
藤村 「問題もいけました。無理かなと思ったんですが」
吉川 「チャレンジしてるんじゃないよ! どこまで乗り切れるかなーみたいなシステムじゃないんだよ」
藤村 「逆になんで状況はいけたんですか?」
吉川 「それもわかってないで言ってたの!? 繰り返せばなんか勝手に相手が納得してくれる魔法の構文だと思って?」
藤村 「便利ですよね」
吉川 「便利に使うなよ! 状況が状況ですから、で飲み込んでたこっちがまんまとしてやられたみたいになっちゃってるじゃん!」
藤村 「なんで進捗は効かなかったんでしょうかねぇ」
吉川 「効く効かないじゃないだろ! 攻撃が無効の属性みたいに言いやがって! 進捗が進捗は意味がわからないだろ!」
藤村 「問題が問題はいいのに?」
吉川 「別によくはないよ! 状況にしても問題にしても、私自身が把握してる部分が大きいから、それを考慮した上で仕方ないと判断しただけだよ!」
藤村 「それなら進捗も把握しておいてもらわないと」
吉川 「そのために聞いたんだよ! 聞いたのにオウム返しで戻されたこっちの身にもなってよ」
藤村 「進捗は現時点では25%というところです」
吉川 「まだそんななの!? え? アウトラインはできてたんだよね?」
藤村 「なにぶん、プロジェクトがプロジェクトなもので」
吉川 「確かに新しい取り組みではあるけど。……ってなんだ、おい! そのしてやったりみたいな顔は」
藤村 「プロジェクトは通りますね」
吉川 「通りますね、じゃないんだよ! 俺の顔色を見てパターンを解析するなよ!」
藤村 「顔色が顔色なので」
吉川 「なんだよ! 顔色が何なんだよ! 片っ端から試していくんじゃないよ!」
藤村 「顔色は無理でしたか」
吉川 「意味もわからないだろ! 顔色が顔色だからしょうがないって。ゾンビに対するお声掛けかよ!」
藤村 「どういうことでしょう?」
吉川 「どういうことじゃないよ! 特に意味はないよ! 取り立てて反応されると困るだろうが。自分は繰り返し構文で逃げ切ってるくせに、こっちの言葉のディティールだけきちんと受け止めるなよ!」
藤村 「わかりました。きちんと受け止めません」
吉川 「それもどうかと思うよ! 汲めよ! 受け止めていいのと受け止めなくていいのを自己判断でやって受け止めろよ!」
藤村 「受け止めが受け止めなので」
吉川 「そんな言葉ねえんだよ! 乗り切れないよ、それじゃ! ちゃんと考えて発言しろと言ってるんだよ」
藤村 「発言が発言なので」
吉川 「確かにこっちの発言も問題があったけども!」
藤村 「イケた」
吉川 「イケた、じゃないんだよ!」
暗転
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます